業務上横領の犯罪成立のポイントと判例から学ぶ処罰の重さを解説
業務上横領は、企業内で発生するケースが多く、重大な法的リスクを伴う犯罪です。本記事では、判例を通じて、業務上横領がどのように成立し、どの程度の処罰が科されるかを詳しく解説します。具体的な事例をもとに、犯罪成立のポイントや、刑罰の重さがどのように判断されるのかを学べます。また、業務上横領が発生した際の会社の対処法を提供します。この記事を通じて、業務上横領に対する理解を深め、適切な対応を学んでいきましょう。
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業務上横領罪の定義とポイント
業務上横領罪は、職務において他人から預かった財産を不正に扱う行為を罰する法律です。企業内で特に問題となりやすく、発覚した場合には重い処罰が科される可能性があります。ここでは、業務上横領罪の基本的な定義と、犯罪が成立するためのポイントについて詳しく解説します。
業務上横領罪の定義
業務上横領罪は、業務に従事する者がその職務に基づいて他人から預かった財産を不正に自分のものとする行為を指します。
この罪は、日本の刑法第253条に規定されており、業務上で信頼関係に基づいて財産を扱う立場にある者が、その信頼を裏切る行為を行った場合に成立します。
一般的な横領罪と比較して、業務上横領罪はより重い刑罰が科される傾向にあります。
業務上横領罪成立のポイント
業務上横領罪が成立するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、加害者が「業務」に従事しているかが重要です。この業務は、雇用契約や委任契約などに基づくものであり、日常的な仕事の一環として財産を預かる立場にあるかが求められます。
次に、その財産が「他人から預かったもの」である必要があります。これは、会社の資金や顧客から預かった金品などが該当します。
また、その財産を「不正に占有」する行為、つまり自分のものとして使用したり、処分したりする行為が横領罪として問われます。
窃盗罪や背任罪等との違いは?
業務上横領罪、窃盗罪、背任罪は、いずれも財産に関連する犯罪ですが、それぞれの罪は異なる要素に基づいて成立します。ここでは、それぞれの定義と相違点について詳しく解説します。
業務上横領罪
業務上横領罪は、業務の中で他人の財産を預かる立場にある者が、その財産を不正に自分のものとする行為に対して成立します。
この罪は、職務上の信頼関係を悪用して財産を占有するため、特に企業や組織内で問題となりやすいです。
例えば、会社の経理担当者が企業の資金を私的に流用する場合や、顧客から預かった資金を不正に処分する行為が業務上横領に該当します。刑法第253条に基づき、通常の横領罪よりも重い処罰が科されやすいです。
窃盗罪
窃盗罪は、他人の財産を無断で持ち去る行為に対して成立する犯罪です。窃盗は、物理的な占有者が他人の財産を、その持ち主の意思に反して盗むことを指します。
典型的な例として、他人の家から現金や物品を盗む行為が挙げられます。窃盗罪は刑法第235条で規定されており、窃盗の行為そのものに対して刑罰が科されます。
背任罪
背任罪は、信任関係に基づいて他人の財産を管理する立場にある者が、その地位を悪用して財産を不当に処分し、被害者に損害を与える行為に対して成立します。背任罪は、財産そのものを自分のものとするのではなく、他人に損害を与える目的で財産を不正に処分する点が特徴です。
例えば、会社の役員が会社の資産を不適切な取引に使用し、会社に損害を与える行為がこれに該当します。背任罪は刑法第247条に規定され、財産の不正な処分によって生じる損害の有無が重要な要素となります。
相違点
業務上横領罪、窃盗罪、背任罪の主な相違点は、行為の主体とその性質にあります。業務上横領罪は、業務の中で財産を預かる者が、その財産を自分のものにする点で成立します。一方、窃盗罪は、他人の財産を無断で持ち去る行為が対象であり、犯行時に財産が被害者の管理下にあることが前提です。背任罪は、財産を管理する立場の者が、その財産を不正に処分して損害を与える点に焦点が置かれています。
さらに、業務上横領罪は、職務上の信頼を悪用した犯罪であるため、特に企業や組織内で重大な影響を及ぼします。窃盗罪は物理的な占有を前提とするため、財産の持ち去りが行為の中心となります。背任罪では、財産そのものではなく、財産の処分において信頼関係を損なう行為が問題となります。
業務上横領の判例を紹介!
業務上横領は、企業や組織内で信頼を裏切る行為として、厳しく処罰される犯罪です。ここでは、実際の判例を紹介し、それぞれの詳細と判決について解説します。
【判例1】経理担当者が会社資金を私的流用
中小企業の経理担当者Aさんは、20年以上にわたり会社の資金管理を任されていました。
しかし、Aさんはその職務を悪用し、会社の口座から自分の個人口座に資金を振り込む手口で不正を繰り返していました。その方法は巧妙で、会社の資金が少しずつ抜き取られる形で行われ、Aさんの不正は長期間発覚しませんでした。総額で約1,500万円が私的に流用され、その資金はAさんのギャンブルや高額商品の購入に使われていたことが後に判明しました。
この不正が発覚したのは、外部監査による帳簿の照合がきっかけでした。監査結果を受けて内部調査が行われ、不正行為が明らかになり、Aさんは即座に逮捕されました。
業務上横領罪で起訴されたAさんに対して、裁判所は「長期間にわたり計画的に行われた悪質な犯罪行為であり、企業に重大な損害を与えた」として、懲役7年の実刑判決を言い渡しました。
また、Aさんの不正が会社全体の信用を大きく損なった点も、判決において重視されました。被害額が多額であったことと、長年にわたり信頼を裏切り続けた背景が厳しい処罰に繋がった事例です。
【判例2】銀行員が顧客口座からの不正引き出し
大手銀行の支店に勤務していたBさんは、20年以上の経験を持つベテラン銀行員でした。彼は顧客の信頼を得ていましたが、その立場を利用して不正行為を行っていました。Bさんは、顧客が頻繁に口座を確認しないことを知り、複数の口座から少額ずつ資金を無断で引き出す手口を使い、その総額は3,000万円に達しました。Bさんは顧客のサインを偽造し、引き出した資金を個人的な投資に回していましたが、その投資が失敗し、返済不能となったことで不正が発覚しました。
銀行内部での監査により、この不正行為が明らかになり、Bさんは即座に解雇され、業務上横領罪で起訴されました。裁判において、裁判所はBさんが「銀行員としての立場を悪用し、顧客の信頼を著しく裏切った」ことを厳しく指摘しました。さらに、被害者が多く、被害額も非常に大きかったため、Bさんには懲役8年の実刑が言い渡されました。
また、裁判所は、Bさんに対して被害者への全額賠償を命じました。この判例は、金融機関における信頼がいかに重要か、そしてその信頼を裏切る行為がどれほど厳しく処罰されるかを示すものです。
【判例3】介護施設での入所者資金の不正利用
介護施設で事務を担当していたCさんは、高齢者から預かった資金を管理していましたが、彼はその資金を私的に流用する不正を働いていました。Cさんは、入所者の家族から預かった現金を生活費に充てたり、施設が管理する入所者の預貯金を無断で引き出し、自分の口座に入金するなどしていました。最終的には総額500万円以上の資金の不正流用が発覚しました。
この不正は、入所者の家族が口座の残高に異常を感じ、施設への問い合わせがきっかけで発覚しました。内部調査の結果、Cさんの数年間にわたる不正行為の実施が明らかになり、彼は業務上横領罪で逮捕・起訴されました
裁判では、「弱者である高齢者やその家族の信頼を裏切り、資産を不当に奪った行為は非常に悪質である」として、懲役5年の実刑判決が下されました。裁判所は、Cさんが施設内の信頼関係を崩壊させたこと、さらに高齢者という社会的弱者に対する犯罪であったことを重視し、厳しい判決を言い渡しました。
【判例4】社員が売上金を着服
小売業を営む企業で働く社員Dさんは、店舗の売上金を集計し、銀行に預ける業務を担当していました。しかし、Dさんは日常的に売上金の一部を抜き取り、自分の口座に入金して私的に使用していました。Dさんの手口は、毎日の売上金のうち、少額ずつを着服するというもので、発覚時には総額約800万円に達していました。
この不正は、店舗の売上が不自然に減少していることに気付いた上司が、内部監査を実施したことで明らかになりました。Dさんは、長期間にわたり計画的に不正を行っていたことから、業務上横領罪で起訴されました。
裁判では、Dさんの行為が「企業の経済的基盤を揺るがし、同僚や上司の信頼を深く傷つけた」として、懲役6年の実刑判決が言い渡されました。
また、裁判所は、Dさんの犯行が長期にわたり行われた計画的なものであることを重視し、実刑判決を下しました。この判例は、日常業務の中での不正行為がいかに企業に深刻な影響を与えるかを示すものです。
【判例5】IT企業の社員が顧客データを不正流用
ある大手IT企業で働くエンジニアEさんは、顧客から預かったデータを管理する職務に就いていました。
しかし、Eさんは業務上の信頼を悪用し、顧客のデータを不正にコピーして外部に流出させ、金銭的な利益を得ていました。このデータには個人情報や企業秘密が含まれており、その流出により顧客に多大な被害が発生しました。Eさんはデータの売買を通じて1,200万円以上の不正利益を得ていましたが、内部告発によってこの行為が発覚しました。
企業は直ちに内部調査を開始し、Eさんの不正行為が確認されたため、即座に解雇しました。Eさんは業務上横領罪および個人情報保護法違反で起訴されました。裁判所は、「業務を通じて得た信頼を悪用し、顧客に重大な損害を与えた極めて悪質な行為である」として、懲役9年の実刑判決を下しました。
また、Eさんには不正に得た利益の全額返還と、追加的な損害賠償も命じられました。
この判例は、IT分野でのデータ管理における信頼の重要性と、これを裏切る行為が厳しく処罰されることを強調しています。
業務上横領罪の時効期間は?
業務上横領罪が成立した場合、刑事事件と民事事件それぞれで時効期間が異なります。ここでは、それぞれの時効期間について解説します。
刑事事件の時効期間
業務上横領罪が刑事事件として問われる場合、その時効期間は法律で定められています。刑事事件における時効期間は、通常、犯罪が発覚した時点から7年です。この期間内に捜査機関が起訴しない限り、加害者は法的に責任を問われなくなります。
しかし、時効が成立する前に捜査が開始された場合や、途中で時効が中断される事例もあり、必ずしも7年で時効が成立するわけではありません。
民事事件の時効期間
一方、業務上横領に関する民事事件では、被害者が加害者に対して損害賠償を求められます。この場合の時効期間は、通常10年とされています。この10年間は、横領が行われた時点からカウントされますが、被害者が損害を認識した時点から起算されることもあります。
損害賠償請求においても、時効が中断される場合があります。
業務上横領発覚時の会社の対処法
会社内で業務上横領が発覚した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。ここでは、具体的な対処法について段階ごとに解説します。
事実関係の調査と証拠収集
横領の疑いがある場合、最初に行うべきは社内での事実関係の徹底した調査と証拠の収集です。
まず、監査部門や内部調査チームを動員し、横領が行われたとされる期間の帳簿や電子データ、取引記録を精査します。
また、同僚や上司からの聞き取り調査も重要です。これにより、横領行為が実際に行われたかどうかを客観的に確認します。証拠としては、金銭の流れを示す書類や不正に操作されたデータ、関係者の証言やサイトの検索履歴などを確保します。これらの証拠が揃っていれば、後の法的手続きで会社側の立場を強固にできます。
証拠が十分でない場合は、後々の裁判で不利になる可能性が高いため、事前の準備は念入りに行いましょう。
本人への事情聴取
十分な証拠を揃えた後で、横領を行った疑いのある従業員に事情聴取を行います。この際、証拠を提示しつつ、冷静に状況を説明し、本人の反応を確認します。
事情聴取では、自白が一つの重要な目標ですが、そのためには証拠に基づいた具体的な質問の実施が求められます。本人が罪を認めた場合、その供述内容を文書で記録し、本人に署名を求めます。これにより、後の法的手続きにおいて有力な証拠となります。
ただし、証拠を偽造したり、圧力をかけるなどの不適切な手法は絶対に避けるべきです。
損害賠償請求・横領金の返済請求
事情聴取の結果、横領が確認された場合、次に行うのは損害賠償請求と横領金の返済請求です。まず、本人の財産状況や返還能力を確認するための調査を行います。この際、身元保証人の財産も調査対象に含めると良いでしょう。
その後、正式な返還請求を内容証明郵便で本人に送付します。返還が行われない場合には、民事訴訟を起こし、法的手続きを通じて賠償を求めます。さらに、必要に応じて、保証人への請求や財産差し押さえも検討します。
これにより、会社としての損失を最小限に抑える努力を行います。
内部通報制度の活用
業務上横領が発覚した場合、内部通報制度を活用することも重要です。この制度を利用することで、従業員が不正行為に気づいた際に、匿名で安全に報告できる環境の整備ができます。通報を受けた場合、速やかに調査を開始し、適切な対応を講じることで、不正行為の早期発見と抑止が可能となります。
また、通報者が不利益を被らないよう、適切な保護措置を講じることも重要です。内部通報制度の存在は、企業全体のコンプライアンス意識の向上にも寄与します。
懲戒解雇
業務上横領が確認された場合、会社としては懲戒解雇の検討が一般的です。横領は重大な背信行為であり、会社の信用を大きく損なうため、たとえ少額であっても厳正に対処する必要があります。解雇を行う際には、解雇理由を明確にし、社内規定に基づいた正当な手続きの実施が重要です。証拠が不十分なまま解雇を行うと、不当解雇として従業員から訴えられるリスクがあります。
したがって、解雇を決定する前に、法務部門や弁護士の助言を受けながら慎重に進めるべきです。
刑事告訴
最終的に、横領金の返還が得られない場合や、犯行の悪質性が高いと判断された場合には、刑事告訴を行います。
まずは警察に告訴状を提出し、捜査を依頼します。警察が告訴を受理した場合、捜査が進められ、場合によっては検察庁に送検されます。検察が起訴を決定すれば、刑事裁判が開かれ、被告人には実刑や執行猶予などの刑罰が科される可能性があります。刑事告訴は、被害回復とともに再発防止のための重要な手段です。
業務上横領罪の刑事告訴を行う際、被疑者が初犯で示談に応じる意思がある場合は、示談の成立が量刑上有利に働く可能性があるため、弁護士を通じて慎重に示談交渉を進める場合があります。
まとめ
業務上横領は、企業内で信頼を裏切る重大な犯罪であり、業務中に預かった財産を不正に扱うことで成立します。
この記事では、業務上横領罪の定義や成立のポイント、窃盗罪や背任罪との違い、そして判例を通じて明らかにされた処罰の重さを解説しました。また、横領が発覚した際の企業の対処法についても触れ、法的リスクを理解しつつ、適切な対応が求められることを示しています。もし横領が発覚したら本記事をもとに適切に対処しましょう。また、横領が疑われる場合には、探偵による社内調査も可能です。
PIO探偵事務所は全国24地域で弁護士協同組合特約店の探偵興信所としての実績を持ちます。ベテラン探偵が多数在籍しており、年間12,000件の探偵業務を行っています。ご相談や費用のお見積りは無料です。ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の著者:探偵社PIO 調査員 Y.K
調査歴10年。
年間200件以上もの調査を行う。
関連タグ: 業務上横領
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。