横領罪によって差押さえすることがある?差押さえの対象となる財産やその方法について解説します

従業員の業務上横領などによって、企業が多大な損害を受けた場合、刑事責任を問うだけでなく、その損害賠償をしてもらうことが重要なポイントとなります。そこで、今回は、横領罪によって行う「差し押さえ」に注目し、その方法や問題点などについて解説します。

浮気・素行調査をお考えの方はPIO探偵事務所へご相談ください

株式会社ピ・アイ・オは興信所探偵社として業歴52年に及ぶ経験と全国24都府県の弁護士協同組合特約店指定として永年の実績を持つ興信所探偵社です。多くの弁護士先生方・法人・個人様からのご依頼をお受けし、「まごころの調査」をモットーに様々な問題の解決に向け、当社の機動力・調査力を駆使し、納得の結果を実現してまいります。

契約以外の経費の水増しや追加料金は一切いただきません。
相談・お見積りは完全無料です。まずはお気軽に興信所探偵社PIOまでご相談下さい。

インターネット初回限定プラン

目次

横領罪とは

自己が占有する他人のものを不法に横領することにより罰せられるものです。

横領罪には3つの種類があります。

1,単純横領罪

横領罪の基本ともいえる単純横領罪は、他人から預かった金銭を自分で使ってしまった、他人から借りていたものをネットショップで販売して金銭を得たなどのケースが該当します。

単純横領罪の法定刑は、5年以下の懲役となっています。

2,業務上横領罪

業務上で占有しているものを横領することです。経理担当者が会社のお金に手を付けた、現金で集金した費用を一部自分のものとして着服したなどのケースが該当します。

個人に比べ、業務として扱うお金は高額であることから、業務上横領の場合には大きな金額が横領されるというケースも多くなっています。

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役となっています。

3,遺失物等横領罪

他人の占有から離れたものを自分のものにすることです。

たとえば、道で拾った財布を自分のものにしてしまうなどの例が挙げられます。

遺失物横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料となっています。

横領が発覚した場合どうなってしまう?

横領がばれてしまったら、どのような処分を受けることになるのでしょうか?

1,逮捕の可能性がある

被害者側が被害届や告訴状を出した場合には、逮捕の可能性があります。特に、横領の金額が大きい場合や被害弁償される可能性が低い場合には、逮捕の可能性が高まるでしょう。

2,企業から解雇処分を受ける可能性がある

横領が発覚すれば、会社が従業員に対して行う最も重い罰である懲戒解雇となる可能性があります。

懲戒解雇処分となれば、退職金が支払われなかったり、再就職の際にハンデを追うなどのさまざまなデメリットが生じることとなります。

3,民事責任を問われる可能性がある

横領は刑事罰だけでなく民事責任を問われる可能性があります。きちんとした謝罪がなかったり、返済が滞ったりする場合には民事裁判になる可能性も出てきます。

横領が発覚すれば、すぐに逮捕されたり、懲戒解雇を受けるというものではありません。

ただし、被害額が大きかったり、被害弁償がされる可能性が低い場合、さらには本人からの謝罪がないなどの悪質性が高い場合などには大きな罰が与えられることとなる可能性が高まります。

横領が発覚した場合には、きちんとした謝罪や確実に弁償することを示すことが、その後の処分を大きく左右するといっても過言ではないでしょう。

横領罪による差押えの意味

税金や借金を支払わない場合に、行政や貸主は財産の「差し押さえ」をおこないます。。これらは、財産を担保とする意味合いがあり、 支払いが行われないようであれば、それらの財産を没収することができるわけです。その差し押さえを横領罪で利用するのはどういうことなのでしょうか。

ここでは、横領罪に対する差し押さえの利用についてみていきましょう。

横領罪では被害者が加害者に対して「仮差押え」を行うことがある

仮差押は、強制執行する前の保険のような意味合いがあり、将来的に加害者の財産に対して強制執行できるための予約と考えていいでしょう。実際に強制執行する能力はありませんが、加害者が財産を隠したり、処分するといったことを制限することができるため、損害賠償できないという状況を防ぐことができます。

民事訴訟で損害賠償請求が勝訴すれば、財産の差押(強制執行)が可能になるということです。

訴訟から判決まで1年以上かかることが多く、業務上横領の場合は数年に及ぶこともあるため、その間に財産の隠蔽や処分などができないようにするのが「仮差押え」です。

差押えと仮差押えの違い

差押えと仮差押えの違いについてもう少し深堀して見ましょう。

差押えとは、裁判所が財産を押収することであるのに対し、仮押さえとは、差押えを前提に財産を差し押さえておくものであり、強制執行の実行力を高めるためのものです。

両者の違いとして、一つ目に挙げられるのが根拠となる法律です。

差押えについては、民事執行法に基づくものである一方で、仮差押えは民事保全法に基づき施行されるものです。

次に、債務名義の必要性についても違いがあります。

債務名義とは、債務の存在や範囲、また債権者や債務者を証明する公的文書のことであり、差押えについては債務名義が必要であるのに対し、仮差押えの場合には、債務名義なしでも進めることができます。

さらに、担保金の有無にも違いがあります。

担保金とは、仮差押えによって債務者の財産の処分を制限する際に、債務者に不当な損害を与えないようにすることを目的としたものです。

担保金の相場は、目的物もしくは債権額の10~30%とされていますが、仮差押えの対象が何かによって変動が生じます。

仮差押えを行うための条件

仮差押を行うためには、被保全債権と、債権の保全する必要性が必要になります。

被保全債権とは

被保全債権とは、債権者が債務者に対して金銭債権を持っていることで、業務上横領の場合は「不法行為に基づく損害賠償請求権」が被保全債権に該当します。

会社側が被保全債権を裁判所に疎明する必要があります。疎明とは、「一応確からしい」と言える証拠を示すことで、業務上横領で言うと、「加害者が着服したことは一応確かである」という証拠を提出する必要があります。

一見曖昧な言い回しですが、民事訴訟を踏まえた強制執行とは違い、準備段階で行う手続きであるため、証拠の部分がやんわりとした感じになっています。

ちなみに、民事訴訟の場合は「まず確かである」という確定的な証拠が必要になるため、明確な差別化が図られていると言えるでしょう。

保全の必要性とは

保全の必要性とは、債権を保全する理由のことで、財産を仮差押しておかないと、隠蔽や処分、譲渡などによって、強制執行後に回収できない可能性があるという理由がなければ仮差押はできません。

業務上横領の場合は、横領したお金を返済できるほどの資産を持っていることは稀であるため、保全の必要性が認められやすい傾向にあります。

仮差押えの特徴

仮差押えにはどんな特徴があるのか、差押え(強制執行)と比較して何が違うのかについてもみていきたいと思います。

加害者(債務者)に仮差押えの情報が漏れない

差押えは債務者に財産を処分させないための手続きなので、相手にその事実がバレてしまうと、財産を処分されてしまう可能性(仮差押え申請中は対応できない)があります。

こうした理由から、仮差押えが確定するまでは相手に知られないよう、裁判所から通知がいくこともありません。裁判所は債権者側の情報をもとに仮差押えの判断を行います。

手続きが非常に早い

仮差押えは最短で数日と、非常に早い段階で手続きが完了します。これは、決定までに時間がかかってしまうと相手に財産を処分されてしまうなどの問題を考えると、大きなメリットになる点ではないでしょうか。

業務上横領による逮捕の場合、刑事事件として捜査してから数年後に逮捕というケースもあるため、非常に早いということが言えます。

被害者(債権者)は手続き時に担保金を納める必要がある

仮差押えは、被害者側の言い分によって成立するものなので、その言い分が間違っていた場合や、裁判で敗訴した際に損害賠償を請求される可能性があります。こうした損害賠償金として、あらかじめ、裁判所に「担保金」を納付する必要があり、担保金を納付して仮差押えが可能となります。

仮差押えの流れ

続いては、仮差押えはどのようにして進められていくのかについてその流れを見ていきましょう。

1,裁判所への申し立て

仮差押えは、翻案の管轄裁判所もしくは、仮差押えをする者の所在を管轄裁判所のいずれかに「仮差押申出書」を提出して申し立てを行います。

2,裁判官による審理

裁判官による審理のうえ、仮差押えの可否が決定されます。

3,担保決定

仮差押えが認められたら、次に担保金を決定し、提供する必要があります。先述の通り、担保金は対象物もしくは債権額の10~30%が相場とされていますが、対象物もしくは交渉により金額を下げられる場合もあります。

4,担保の提供

決定した担保金を供託もしくは、支払保証委託契約に基づく担保を提供します。

支払い保証委託契約とは、債務者に対して損害賠償の必要が生じた場合に、債権者に代わって支払い保証先の銀行などが支払いをおこなうことを締結した契約のことです。

5,仮差押えの執行

担保提供により仮差押えが決定となれば、仮差押え対象財産を保全するための手続きが進められます。

具体的な差押えの内容に関しては後のコンテンツで詳しくご紹介していきます。

仮差押えのメリット・デメリット

続いては、仮差押えをすることのメリット、デメリットについて見ていきましょう。

メリット

1,債権回収ができる可能性が高まる

差押えが決定されるまでには、短くても数か月、長い場合には数年の期間を要することとなります。その間に、所有している資産を売却したり預金を隠す、使ってしまうなどされてしまうと、債権を回収することができないというリスクがあります。

仮押さえはこのようなリスクを回避し、債権の回収の可能性を高めることに繋がります。

2,債権者との交渉を有利に進めやすくなる

仮差押えがされてしまうことで、財産を自由に処分できなくなるなどの不都合が生じることとなります。

これにより、債務者には資金繰りに支障が生じるなどのデメリットが生じることから、仮押さえを取り下げてもらえるような交渉を進めることとなるでしょう。

仮押さえを執行できている時点で、債権者は債務者よりも有利な立場にいることとなります。

そのために、この段階での交渉は債権者の有利な条件で進めることが可能です。

場合によっては、民事訴訟なしで債権をすべて回収することができるというケースもあります。

3,債務者に返済を真剣に考えさせるきっかけとなる

これまでは、債権者から催促の電話や請求書が送られてきても無視していたという場合でも、仮差押えを裁判所が認めたという事実があり、実際に預金を引き落としできなくなったり不動産を売却できなくなるなどの支障が生じれば、債務者に大きなプレッシャーを与えることができます。仮押さえにより、債務者は危機感を覚え、返済に向けた行動を取るきっかけを与える可能性が高まります。

デメリット

1,担保金を用意する必要がある

先にもお話したとおり、仮差押えには担保金が必要となります。担保金は、訴訟で勝訴するまでのまま預けたままにしておくものであり、債権者はその分のまとまった資金が確保できなければ、そもそも仮差押えをするに至らないという結果になってしまいます。

2,手間がかかる

仮差押えの手続きは、非常に煩雑で手間がかかるものです。

裁判所に提出する書類が多く、また書類で仮押さえを執行するための内容を証明する必要があるため、作成にあたっては専門的な知識が必須と言えるでしょう。

そのため、素人が一からやろうとしても困難なことから、法律事務所に依頼する必要があります。それに伴い、弁護士の選定や依頼費用の準備などの必要が生じます。

3,債権者が破産してしまった場合に仮差押えが無効となる

仮差押えが執行されれば、財産の処分を禁止することができますが、債務者が破産や民事再生などの法的整理をした場合には、仮差押えが無効となってしまいます。

4,敗訴した場合には、債務者に対して損害賠償責任が生じる

仮差押えの後に、訴訟で敗訴となってしまうと損害賠償を支払う必要が生じます。

仮押さえの際に必要とされる担保金は、敗訴した場合に生じる損害賠償を見越して預けられるものであり、仮に敗訴となった場合には、この担保金で賄うこととなります。

しかしながら、担保金では賄いきれないこともあり、その場合には債権者が不足分を追加で支払う義務が生じます。

仮差押えが執行された場合の対応

続いては、債務者の立場に立って実際に仮差押えが執行されてしまった場合にはどのような対応をとるべきなのかについて解説していきます。

先にもお伝えしたとおり、仮差押えは債務者に情報が漏れないで進められるものであるため、「銀行から預金を下ろそうとしたら出来なかった」「自宅の登記を取ったら仮差押えと書かれていた」など、事後で知るケースが多くなっています。

仮押さえは、財産を自由に処分できなくなったり、借金があることを周囲に知られるなどのデメリットがあるほか、民事訴訟の準備段階である仮押さえを放置し、債権者との交渉等を進められなければ、民事事件だけでなく刑事事件についても罪を問われる可能性が高くなります。

したがってもし、仮押さえされているということに気が付いたら出来るだけ早い段階で対処することがカギとなります。

横領罪で差押えされる財産

横領罪の場合、どういったものを差押えるのか気になるところだと思います。ここでは、通常の差押えと比較して、横領罪の差押えではどんなものが差し押さえられるのかみていきましょう。

銀行預金などの金銭差押え

銀行などの預金残高から指定した金額を仮差押えすることができます。例えば、差押え金額が200万円だった場合、預金残高から200万円は銀行が管理する口座に移され、債務者がそのお金を引き出すことができなくなります。

ただし、預金が残っていない場合はこの方法が利用できないため注意が必要です。

給料差押え

業務上横領を行った後に懲戒解雇などを行わず、減給などによって雇用し続ける場合は、給料を差し押さえるという方法が利用できます。ただし、特定の条件によって債務者が退職してしまうような場合や、勤務することが困難になってしまった場合は差押えできない可能性もあります。

特に、懲戒解雇などや逮捕などの社会的制裁を受けた場合、再就職が難しく、安定した収入を得るのが難しいので、給料差し押さえの効力も弱まってしまうかもしれません。

不動産の差押え

不動産の仮差押えをすることで、登記には「仮差押」と表記されます。この状況で不動産を売却することも可能なため、債務者が知らずに不動産を売却してしまうというケースが発生することもあります。

しかし、仮差押えした不動産は「裁判で勝訴」すれば、所有者が変わったとしても差押えすることが可能なため、最終的には差押えされることになります。

※仮差押された不動産はのちに差押えされる可能性が高いため、たいていの場合は購入されることがありません。

差し押さえられたものは最終的にどのようになるのか

各種財産が実際に差し押さえられた場合にどのようにして処理されるのでしょうか?

1,銀行預金

差し押さえられた預貯金については、裁判所から債務差押え命令が対象口座元である銀行に送付され、それに基づき債務者の口座にある預金を別口座に移されることになります。

2,給与

給与が差し押さえられると、勤務先から受け取る給与を満額で受け取ることができなくなります。なお、給与の差押えの上限は、原則として手取り金額が月額44万円以下の場合には、手取り金額の4分の1、手取り金額が月額44万円を超える場合には、手取り額から33万円を差し引いた額とされています。したがって金額は受取給与によって変わってくることとなります。

3,不動産

差し押さえられた不動産は、差押え登記がされて競売もしくは公売にかけられることになります。

ただし、競売もしくは公売にかけられた不動産が必ずしも債務の全額を賄えるというケースばかりではありません。

そこで競売もしくは公売以外に差押された不動産を任意売却で売るという方法もあります。

任意売却は、物件の売却価格よりもローン残高が多い場合に借入先の金融機関の許可を受けて売却をするという方法です。

任意売却は、競売等よりも高い価格での売却が期待できるほか、金融機関から引越し費用を受け取ることや周囲に知られにくい等のメリットがあります。

ただし、任意売却の場合には、債権者がどのような立場であるかによって認識が変わってきます。

特に、債権者が国や自治体である場合には任意売却が認められるケースは少なくなっていることから、差押え元や債権者と債務者の関係性などを正しく理解したうえでの選択となるでしょう。

差押えをおこなう際の注意点

続いては、差押えをおこなうにあたって注意すべきポイントについて見ていきましょう。

1,債務者の財産の事前確認

そもそも債務者に十分な財産がない場合には、差押えを行っても意味がないといえます。そのため、差押え前には債務者の財産の調査が必須です。財産の具体的な内容や、金額等について詳細を把握し、差押えが可能な財産を見極めておくことで、差押えに効力があるのか否かを判断することができるほか、効率的に手続きを進めていくことに繋がります。

債務者が持つ財産の情報を開示させる制度として生まれたのが、「財産開示手続」です。

財産開示手続では、債権者が裁判所に申し立てをして、債権者本人から財産を聞き取り、差押えに必要な情報を得るためのものです。

なお、仮に本人に十分な財産がない場合には、身元保証人に損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、身元保証人の責任の範囲および契約期間についての確認が必要となります。

2,債務者が異議を申し立てる可能性がある

差押えを行う手続きを始めるにあたって、債務者が異議を申し立てる場合があります。これにより、裁判所が追加で審査をおこなうなど更に執行までの時間を要することになる可能性があります。したがって、申し立ての際には債務者が異議を申し立てるような余地がないような十分な内容を揃えておく必要があるといえます。

まとめ

以上、今回の記事では横領によって差押えされるケースと、仮差押えと差押えの違い、また差押えではどのような財産が対象となるのかなどについて解説させていただきましたがいかがだったでしょうか?

横領罪の場合も、基本的な差押えと同じように手続きを踏むことになりますが、加害者が財産を保有していることが前提になるため、場合によっては仮差押えが効力を発揮しないこともあるということもご理解いただけたと思います。

横領によって差押えを検討している場合は、債務者の財産の事前確認や、仮差押え、差押えに関する各種手続きをスムーズに進めていくために、弁護士に相談することをおすすめします。煩雑な書類の作成や手続きを進めていくうえでは、専門家の知識は必須です。専門的な知識をもとに、解決へと導いてくれるでしょう。

専門家監修

この記事の著者:探偵社PIO 調査員 Y.K

調査歴10年。
年間200件以上もの調査を行う。

関連タグ:

株式会社ピ・アイ・オ

探偵社PIO編集部監修

本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

ご相談・お見積は完全無料!

まずは、お気軽に
興信所探偵社PIOまでご相談下さい。

0120-522-541 0120-522-541
オンライン相談も無料
LINEでも無料でご相談ください!
オンライン相談はこちら お電話でお問合せ メール相談はこちら LINE相談はこちら
Top of Page