モラハラ夫(妻)と離婚するための準備とは?ポイントや手順を徹底解説
モラハラとは直接暴力をふるうことではなく、暴言や態度で相手を精神的に追い詰める行為です。DVの一種とされており、れっきとした離婚事由となります。
しかしモラハラ相手との離婚は一筋縄ではいきません。逆上されたり、離婚に応じてくれない、応じたとしても離婚するまでに相当な時間がかかる場合があります。
この記事ではパートナーのモラハラに悩んでいる方のために、モラハラの特徴やモラハラで離婚するさいの注意点、準備、手順などを解説していきます。慰謝料を請求する場合のポイントまでを一挙に解説します。
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目次
パートナーはモラハラ?モラハラの特徴とは?
モラハラの特徴
モラハラに悩む夫婦の特徴として以下のようなものが挙げられます。
- 上下関係ができている
- 相手を無視する
- 人の前でバカにする
- 殴るふりやものを投げつけるなどして脅す
- 一方が相手の顔色を伺って生活している
こうした特徴に当てはまるものがあるなら、要注意です。
モラハラは、自身が被害を受けている時には気が付きにくいもの。
「直接暴力をふるわれていないから」「優しい時もあるから」と現実から目を背けず、自分の置かれている状況や気持ちにしっかりと向き合いましょう。
モラハラの具体例
モラハラにあたる具体的な例として次のようなものがあります。
- 「バカだ」「お前はダメな人間だ」とバカにする
- 理由もなく無視をして口をきかない
- 相手の趣味や考えを否定する
- 人前で笑いものにする
- 相手のミスを何から何まで指摘をする
- 怒ったり不機嫌な様子を見せたりするのに理由を言わない
- 平気でうそをつく
パートナーからこうした行為を繰り返されていませんか?もし心当たりがあるなら、モラハラをされている可能性があることを覚えておきましょう。
上下関係があり一方が恐怖や不安を感じるならモラハラ
「これはモラハラではなく、よくある夫婦喧嘩」と思っていませんか?
もし、その「夫婦喧嘩」であなたがパートナーに恐怖感や不安感を抱いてしまったり、上下ができていて、一方的に叱責したり激昂したりするようなら、それは夫婦喧嘩ではありません。
夫婦喧嘩は対等な関係にある夫婦が、お互いの意見や考え方を話し合い、解決に向けて2人で方法を模索していくことです。
一方を完全に否定したり、バカにしたりして、相手の意見を尊重しない言動は、モラハラにあたります。
モラハラ相手と離婚できるか
配偶者がモラハラであると認識して離婚を決意したとしても、離婚までにはまだハードルがあります。モラハラをする相手は離婚を拒否する傾向にあり、裁判でモラハラによる離婚が認められないリスクがあります。
モラハラ相手との離婚の難しさ
モラハラをする相手は自分が加害行為をしたとの認識を持っていないことがあります。場合によっては自分自身が被害者であると考えていることすらあります。
また、基本的にはモラハラにより相手を支配している立場であるため、自分が支配しているはずの相手から離婚を切り出されることで逆上することもあります。このような事情から、モラハラ相手は離婚請求を拒否することがよくあります。
離婚をするためには、相手との協議による協議離婚、裁判所の調停手続を利用した調停離婚、裁判による裁判離婚の3種類があります。
このうち、協議離婚と調停離婚は相手が離婚に合意しなければ離婚が成立しません。モラハラ相手は簡単に離婚に合意しない傾向にあるため、協議離婚や調停離婚ができず裁判所に離婚を求めなければならないことを覚悟しておく必要があります。
モラハラでは離婚できない?
相手が離婚の同意しない場合に裁判所に離婚を認めてもらうためには、民法上定められた以下の離婚事由に該当する必要があります。
民法770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 1号 配偶者に不貞な行為があったとき。 2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 3号 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 |
モラハラの場合には、民法770条5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかが争われます。DVのように肉体的な暴力があれば比較的裁判所も離婚の必要性を理解しやすいのですが、モラハラでは裁判所が納得するような決定的な証拠を集めることが難しいため、離婚に向けて慎重に準備を進めておかないと裁判所が離婚を認めないことがあります。モラハラでの離婚に向けて必要となる準備については後で具体的に説明します。
モラハラで離婚するさいの3つの注意点
モラハラのつらさは伝わりにくい
モラハラで離婚を選択するさいは、協議離婚、離婚調停をする手段がありますが、一方が承諾しない場合は離婚裁判を起こして裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。
離婚裁判では証拠に基づいて離婚が正当であるかを判断します。
具体的には「パートナーの言動が、婚姻を継続しがたい重大な事由である」ことを伝える必要があります。
モラハラの場合、暴力のような外傷がなく、被害者自身もモラハラに気付きにくいため、体験していない方にはつらさが伝わりにくいので注意しましょう。
「弁護士に理解してもらえない」「調停委員に伝わらない」という悩みも多く聞かれます。
モラハラは伝わりにくい、という点をふまえて、事実が第三者に明確に伝わるような証拠を準備しましょう。とはいえ、どんなものが証拠となるのでしょうか?
モラハラは証拠が残りにくい
モラハラは証拠が残りにくいという特徴があります。外傷がなく、家庭内で起きているため目撃証言などもありません。
またモラハラをする人は、外では「いい夫」「いい妻」を演じていることも多いもの。
そのため、以下のような証拠を集めておくといいでしょう。
- モラハラの音声や記録を保存する
- 詳細な日記をつける
- 専門の窓口へ相談し記録をつける
モラハラの音声や、LINEやメールでの暴言の数々は早く忘れたいとは思いますが、いざという時に証拠として使えるので保存しておきましょう。
またおすすめなのが「日記」です。日付や天気、その日のニュースなどと一緒に、どんなことをされた、どんなことを言われた、自分がどう感じたかを記載しておきましょう。
「パートナーが怖くて動悸がする」「心療内科を受診した」などの記録も大切な証拠の1つとなります。体調面、精神面で苦痛を感じているなら病院を受診しましょう。
モラハラ相手との離婚は長期化しやすい
モラハラの場合、離婚が長期化しやすい傾向にあります。モラハラをする側が「相手の言いなりになって離婚したくない」と思ったり、「離婚となったら体裁が悪い」と感じたりするためです。
ですが事前に「モラハラ相手の離婚は長期化しやすい」と知っておく事で、心の準備ができるので精神的な負担が軽くなります。
モラハラ相手と確実に離婚するための準備
前述したように、モラハラをする相手と離婚するのは思いのほか大変です。しかし、事前にきちんと離婚に向けた準備をしておけば離婚できる可能性は大きく上昇します。そこで、以下ではモラハラをする相手と確実に離婚するために必要となる準備について説明します。
証拠を確保する
まずは証拠を確保しましょう。裁判離婚となる場合はもちろん、調停で離婚請求をする場合であってもモラハラに関する証拠がどの程度あるかは重要です。調停委員が証拠を見て離婚させるべきだと理解すれば、相手に離婚に応じるよう説得してもらえるためです。
モラハラで確実に離婚したい場合には、次のような証拠を集めましょう。
- 心療内科の医師からの診断書
- 相手の言動の記録や録音、LINE等のやりとり
- 相手が物にあたって壊したり散らかした場合はその現場の写真
- モラハラ以外の問題行動に関する資料
モラハラの言動の記録を取る際には、日記形式で、年月日・夫に言われたこと・夫の態度・自分がどう感じたかなどを具体的に記載しておくことがポイントです。また、1回とか2回だけでなく、少なくとも数か月程度にわたり継続して記録を取っておくことが有効です。
また、モラハラ以外にも離婚につながるような問題行動があれば、積極的に証拠を取得しておきましょう。例えば、夫の女性関係、生活費を渡さないなどの経済的DV、妻の浪費などに関するものです。
なかでも、他の女性との浮気や不倫の証拠がある場合には、離婚が非常に認められやすくなります。このため、夫の行動に不審な点がある場合には、探偵事務所などに相談して浮気調査や素行調査をしておくと離婚の際に役立つことがあります。
このほか、離婚の際にもめることの多い財産分与に関しても、相手名義の預貯金口座の通帳、相手が契約している保険に関する書類、給与明細書、車検証など、相手の財産状況に関する資料をバレないように少しずつコピーを取っておくとよいでしょう。
これらの離婚に向けた証拠収集は、相手に気付かれないように細心の注意を払って行う必要があります。モラハラの場合、配偶者が離婚を考えていることに気付けば、さらに支配を強めようと画策し、離婚をあきらめざるを得ない事態に追い込まれるリスクがあるためです。
相手と距離をとる・別居する
モラハラによる離婚の場合には、相手に離婚を切り出す前に別居した方がよいケースが大半です。
モラハラの被害を受けていると相手から精神的に支配されていますので、同居している状態で離婚を切り出すと相手に上手く言いくるめられて離婚を断念するよう仕向けられることがあるためです。
このため、証拠の収集に目途がついたら、次は配偶者との別居に向けて準備を開始することになります。別居先としては実家であることが多いですが、実家に戻ることが難しい場合には自身が別居用に住居を賃貸することになります。
別居の際には、新しい住所を相手に知らせる義務はありません。場合によっては、世帯分離をしたうえで住民票の閲覧制限を掛けることもあります。
別居前に相手に勘づかれると止められる可能性が高いので、相手に気付かれないように賃貸借契約を行い、相手が仕事などでいない日時を狙って一気に荷物をまとめて逃げるといいでしょう。
そのさいは、行先や連絡先は友人であっても秘密にすることが大切です。脅迫文などが届いて、怖い思いをする可能性があるからです。
経済的な基盤を確保する
離婚に向けて別居をするためには、住宅の賃貸に必要な初期費用、引っ越し費用などまとまった資金が必要になります。
別居後から離婚成立までの間は、妻の収入額次第ですが夫から生活費(婚姻費用)をもらうことはできます。しかし、モラハラ夫の場合には「妻が勝手に出て行ったのだから生活費を払う必要はない」などと主張して、すぐには生活費を支払わないことがあります。
このため、別居後の当面の生活費は妻自身が用意するよう算段しておく必要があります。実家などから援助を受ける方法もありますが、妻自身が働いていない場合にはパートでも良いので収入を得る方法を検討しておくと安心です。
相談先を確保しておく
モラハラ相手との離婚では被害者側は自分の判断に迷いを生じやすい傾向にあります。長年、相手から精神的な支配を受けてきた結果、自分自身で判断することができない状態に陥っているためです。
そこで、モラハラによる離婚を考えている場合には、自分だけで手続きを進めようとせず弁護士などの専門家に依頼することや心療内科の医師やカウンセラーなど相談できる相手を確保しておくことが大切です。
モラハラ相手と離婚する手順
モラハラ相手と離婚する際、覚えておきたいのは「自分も感情的にならない」ということです。それを第一に意識しながら、まずは協議離婚を検討しましょう。
ここで離婚につなげることができれば問題ありませんが、離婚の合意に至らなかった場合は離婚調停や裁判離婚も選択肢の1つとして考えておきましょう。
離婚協議をする
離婚するには、まず夫婦間で話し合う離婚協議から始めるのが一般的です。とはいえ、モラハラ相手に自分の意見や考えを伝えるのは困難なもの。第三者や弁護士などの専門家を間に入れて話し合う事をおすすめします。
第三者がいることで、モラハラ相手に自分の意見を伝えやすくなるとともに、相手に離婚を本気で考えているということを印象づけることが可能です。
離婚協議の話し合いの結果、離婚条件が合意に至らなかった場合、離婚調停、それでも解決できなければ離婚裁判を行います。
離婚調停をする
話し合いがまとまらなかったり、スムーズに進行できなかったりした場合は家庭裁判所へ調停を申し立てましょう。
調停であれば、モラハラ相手と顔を合わせずに、調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。
どのようなモラハラを受けたのか、精神的な苦痛を伴っている事実、婚姻生活が継続しがたい理由を調停委員に説明しましょう。
前述した通り、モラハラのつらさは受けた本人でないとわかりにくいもの。具体的かつ説得的にモラハラの実情を伝えるために、きちんとした証拠を集めてのぞみましょう。
離婚訴訟をする
調停でもモラハラをする配偶者が離婚に応じなかった場合、離婚訴訟をおこしましょう。モラハラの証拠があり、夫婦関係が破綻していると認められれば離婚が成立します。
また、裁判所が間に入ることでモラハラ相手と話し合いがスムーズにすすみ、判決に至る前に和解が成立することもあります。
モラハラで慰謝料を請求することは可能?
モラハラによる慰謝料の請求と相場
慰謝料とは、相手の不法行為で受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金のことです。どのような状況であっても、相手との話し合いで合意に至れば慰謝料を支払ってもらう事は可能なので覚えおきましょう。
モラハラが離婚事由に該当すると認められる場合には、モラハラに対する慰謝料も請求することができます。モラハラの慰謝料相場は、不貞行為(不倫)や肉体的な暴力 (DV)と比べると低い金額であり、10万円から50万円程度となることが多いといえます。
ただし、モラハラの程度や期間、モラハラにより精神的な病気を発症しているかなどによっても、モラハラ側が支払うべき慰謝料の金額は大きく異なります。ここでも、モラハラに関する証拠をどの程度集められるかが結果を左右します。
相手方が慰謝料を払おうとしない場合、モラハラの内容を証明することで慰謝料を請求できる可能性があります。ただし多少言い方がきつい、感情の起伏が激しい、といった程度では慰謝料は発生しません。ではどのような場合に、慰謝料を請求でき、さらに増額させることができるのでしょうか。
慰謝料を増額させるポイントは?
モラハラ行為による慰謝料を増額させるポイントは2つあります。
- 相手のモラハラ行為の内容
- 自身が受けた損害の度合い
相手のモラハラ行為が、深夜でもおかまいなしにはじまり、何時間も説教される、異常な束縛を受ける、わめきだすと手が付けられない、などモラハラの内容が悪質であり、そうした行為をある程度の期間、継続して受けていた場合は慰謝料が増額されます。
また相手のモラハラ行為によって、心療内科などに通院することになったなど、損害の度合いが高い場合も慰謝料が増額される傾向にあります。
モラハラ夫(妻)と離婚するなら?対策から手順までを一挙解説
モラハラを受けている側は、自分が被害者であることに気が付きにくいものです。
現在あなた自身が、パートナーとの間に上下関係ができており、パートナーに対して恐怖感や不安感を持っているなら「自分はモラハラにあっているのかも」と危機感を持ってみてください。
モラハラ相手と離婚するには、まず証拠を集めることが大切です。相手の言動を録音する、暴言が記載されたメールやLINEのやり取りを保存することはもちろんのことですが、日付や天気、その日のニュースなどと共に、モラハラの内容、自分自身の体調面・精神面の変化を具体的に記録した日記も有効です。
モラハラ相手との離婚を考えても、気持ちが揺らいでどうしたらいいのか悩んでいる方も多いもの。
そんな方はこの記事を読んで、自身の置かれた状況を意識し、自分自身にとって何が一番良い選択なのかを考えてみてください。
この記事の著者:探偵社PIO 浮気・素行相談員 S.Y
浮気・素行・離婚関連の相談員プロフェッショナル。相談員歴8年。
年間400人以上もの相談を受けている。
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。