刑事事件として背任罪で起訴された場合の刑期とは?背任罪の成立要件や保釈される可能性を解説します

もし、背任罪によって起訴されて「有罪判決」を受けたらどうなるのか考えたことはありますか?他の罪と同様に背任罪の「冤罪」によって疑いをかけられてしまう人や知らず知らずのうちに加担してしまっている人がいないとも限りません。
今回の記事では、もし背任罪で有罪になってしまった場合、刑期がどのくらいなのか、わかりやすく解説いたします。
浮気・素行調査をお考えの方はPIO探偵事務所へご相談ください
株式会社ピ・アイ・オは興信所探偵社として業歴52年に及ぶ経験と全国24都府県の弁護士協同組合特約店指定として永年の実績を持つ興信所探偵社です。多くの弁護士先生方・法人・個人様からのご依頼をお受けし、「まごころの調査」をモットーに様々な問題の解決に向け、当社の機動力・調査力を駆使し、納得の結果を実現してまいります。
契約以外の経費の水増しや追加料金は一切いただきません。
相談・お見積りは完全無料です。まずはお気軽に興信所探偵社PIOまでご相談下さい。

背任罪と保釈について

まず、背任罪と保釈について解説させて頂きます。背任罪について「よくわかっていない」という方もここで、一度理解を深めてもらえたらと思います。
背任罪(はいにんざい)とは
背任罪とは、「信任関係である他人のために、事務を処理するものが、自分や第三者の利益のため、または本人に損害を与える目的で、その任務に背く行為で本人に財産上の損害を与える」行為(=図利)のことで、横領罪に似ている部分もありますが、背任罪の方がより広範囲に適応される罪と言えます。以下に背任罪が成立する要件を示します。
「信任関係である他人のために事務を処理するもの」
「信任関係」とは、信頼して業務を任されている関係性で、会社と従業員の関係性を表しています。「事務を処理するもの」は、財産上の利益に関係する事務(業務)を行なっている従業員のことです。これらをまとめると「会社の経理(財産上の利益)を担当している従業員」ということになります。ただし、財産上の利益に関わる業務であれば経理業務以外も該当します。
「自分や第三者の利益のため、または本人に損害を与える目的」
自分や第三者の利益とは、「自分と自分に関係する人間の利益」のことで、本人に損害を加える目的とは「会社に損害を与える目的」ということです。これらをまとめると「自身や、自身に関係する人の利益にするために、会社に損害を与える行為」ということになります。
「その任務に背く行為で本人に財産上の損害を与える」
「その任務に背く行為で」とは、会社の運営方法を定めた会社法や会社のコンプライアンスを守らない行為であり、「本人に財産上の損害を与える」とは、会社に利益損害を与えるということです。これらをまとめると、「会社の規則を破り、私的な目的で会社に金銭的損害を与える行為」ということになります。
このように、背任罪には「会社に対する財産上の損害」が一定条件で定められており、これらに違反した場合は、いかなる場合であっても罪に問われる可能性があります。
保釈とは
保釈とは、勾留中の被告人に対して、一時的に身柄の拘束が解かれることをいい、一定の条件を満たす状況で所定の保釈金を納付することで可能になります。
保釈と釈放の関係性
釈放と保釈は混合されがちですが、その内容は大きく違います。釈放は起訴前の被疑者が、在宅捜査に変更される場合や、収監された受刑者が出所する場合も含めた全般的な使い方に対し、保釈は起訴後の被告人のみに関係する制度となっています。
背任罪の刑期と保釈条件

もし、背任罪で起訴された場合、刑期はどの程度になるのでしょうか。ここでは背任罪の刑期と保釈条件等について解説していきたいと思います。
背任罪の刑期
背任罪は5年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています。また、特定の人物に適用される「特別背任罪」の場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金という、さらに厳しい罰則が課せられます。また、背任罪の公訴時効は5年と設定されています。
背任罪で実刑になる可能性は少ない
背任罪は、会社側が受けた被害に対しての量刑となるため、一般従業員の背任罪では「実刑」判決が出ることはあまりありません。その理由として以下のことが考えられます。
- 会社側と被告人側で示談にすることがあるため
- 一般従業員が行う背任行為は、企業に対して大きな損害にならないことが多いため
- 「企業イメージ」を維持するため、企業側が公表しないため
背任罪によって、裁判で懲役刑まで発展することは稀で、ほとんどの場合は少ない被害額の背任行為であるため、罰金刑や民事の損害賠償請求を受けることが多いのです。だからと言って罪にならないわけではありませんが、たとえ罰金刑で終わったとしても前科がつくため、一生残るデメリットになってしまいます。
背任罪で逮捕された後、保釈される流れ
背任罪で逮捕されてしまったとしても、以下の方法を利用することで保釈される可能性があります。
勾留の阻止
逮捕から72時間以内に「検察官の勾留請求」を阻止すれば、釈放される可能性があります。たとえ、勾留が認められてしまった場合でも、「準抗告、勾留取り消し請求」を行うことによって、釈放される可能性が高くなります。ただし、これらを個人で行うのは難しいため、弁護士に依頼してサポートしてもらうようにしましょう。
不起訴処分にする
検察側で不起訴処分となれば、刑事裁判に移行することはなくなり、釈放されることになります。背任罪による不起訴を目指すためには「起訴猶予」になる必要があります。起訴猶予にするための効果的な方法には「被害者との示談交渉」が有効で、弁護士を通し、示談を成立させることができれば、釈放される可能性が高くなります。
身柄拘束の必要性がないことを訴える
逮捕、勾留といった方法は、自由を一時的に奪う行為であるため、違法性がなければ認められません。「逃亡や証拠隠滅」の危険性がなければ、釈放を求めることが可能であるため、弁護士を通して捜査機関等に主張しましょう。ただし、釈放のためには「定住居、家族」等の条件等もあるため、全ての人に適応できるわけではありません。
背任罪に問われた時の対処法

背任行為は、れっきとした「犯罪行為」であり、見つかってしまうと罪に問われる可能性があります。そこで、もし罪に問われてしまった場合の対処法をご紹介したいと思います。
弁護士を雇って保釈、釈放の手続きを求める
逮捕、勾留されている場合は、弁護士へ連絡して、「保釈、釈放」の可能性を見出しましょう。少しでも可能性があるのであれば、手続きを進め、釈放の準備をしてください。先述した通り、逮捕から72時間以内に勾留を解除することもできるので、最短で3日以内に釈放されます。
被害者へ示談交渉を行う
起訴されないためには、被害者との「示談成立」が必要となります。弁護士をたて、損害賠償金を含めた示談交渉を進め、裁判までには成立するようにさせましょう。示談が成立していれば、検察側で「起訴猶予」ということになり、裁判を行わずに解決することが可能になります。
背任罪で有罪となった時の刑期

背任罪の刑期の幅
背任罪は、会社や組織の利益を無視して、自身の利益を図る重大な犯罪行為です。その刑期は、法律上かなりの幅がある罪となっています。
具体的には、背任罪の刑期は最短で1年の懲役刑から、最長で5年の懲役刑までと定められています。つまり、背任罪の最も軽い刑は1年の懲役であり、最も重い刑は5年の懲役となるのです。ただし、特別背任罪の場合は、1年〜10年の懲役となります。
最も軽い刑と最も重い刑の差
このように、刑法で定められている背任罪の量刑幅は非常に広いのが特徴です。最も軽い刑から最も重い刑までの差は、なんと4年もの開きがあります。
背任罪は、金融商品取引法違反やあっせん利得処罰法違反等と並ぶ、いわゆる経済的犯罪の中でも、比較的幅広い刑期設定がなされている犯罪類型なのです。
このように量刑幅が大きい理由は、背任行為の態様や結果が千差万別であり、一律の刑期では柔軟に対応できないためです。被害の大きさや犯行の動機、手段の悪質性等に応じて、きめ細かな量刑が必要とされているのが背景にあります。
刑の重さを決める要因
では、具体的にどのような要因が背任罪の刑期の重さを決めているのでしょうか。主なものは以下の通りです。
被害額の大きさ
被害総額が大きいほど、重い刑が科される傾向にあります。金額が大きければ大きいほど、社会的な影響も大きくなると同時に、会社に与える損害が大きくなるためです。
犯行の目的
自己の私腹を肥やすことが目的の場合、より厳しい刑が下されます。一方、会社や組織の危機を回避しようとした場合等は、情状酌量の余地があります。ただし、いずれも不法行為であり許されるものではないことを覚えておきましょう。
犯行の手段の悪質性
暴力や脅迫、詐欺等、背任行為を行う過程で他の犯罪も併発している場合、より重い刑が科される可能性が高くなります。
被害者への影響
犯行により被害者に重大な経済的・精神的被害が発生した場合、その影響の大きさによっても刑期が左右されます。
犯行の計画性と組織性
偶発的な背任行為よりも、あらかじめ計画された組織的な背任行為の方が、重い処罰の対象となります。
このように、量刑には様々な要素が考慮されるのが特徴です。
量刑を軽減する方法
では、背任罪の刑期をできるだけ軽減するためには、どのような方策が考えられるでしょうか。
自首
自ら進んで罪を告白し、早期に捜査に協力することで、量刑の軽減が期待できます。ただし、「自首」とは事件が明るみに出る前に捜査機関に申し出ることをいいます。警察が捜査をはじめてから申し出るのは、あくまでも「出頭」です。
自首は法律上の減刑事由となりますが、出頭はそうではありません。量刑判断の一つの要因になる可能性はありますが、両者は法律上明確にわけられていることを理解しましょう。
早期の反省と協力
犯行への反省の態度を示し、捜査に積極的に協力することも、量刑軽減の要因となります。すべての情報を告白することで事件解決までの時間が短くなり、結果的にあなたの量刑が軽減される可能性があります。
損害の回復
被害額を全額または一部でも返金・補償することで、被害者への配慮が認められる可能性があります。
情状酌量の余地
犯行動機が会社や組織の利益擁護にあった場合等、情状酌量の余地が認められる場合もあります。ただし、借金があった、家庭が経済的に困窮している等の個人的な理由は情状酌量の余地にはならない場合があります。
このように、自発的な行動により少しでも刑期の短縮を図り、情状酌量を考慮してもらうことが重要となります。
事例からみる背任罪の刑期
実際の判例を見てみると、背任罪の刑期には大きな幅があることがわかります。
比較的軽い刑
被害総額が数千万円程度の事案で、自首して早期に反省の態度を示し、被害回復に努めた事例では、懲役2年から3年程度の刑が科されています。
比較的重い刑
一方で、被害総額が数十億円に及ぶ大規模な背任事案(特別背任罪)では、計画性が高く、被害回復の努力も不十分だった場合、懲役7年から10年の重い刑が下されています。
最重要刑
さらに、背任行為に加え、暴行や脅迫等の犯罪も併発した悪質な事案では、懲役10年という、背任罪の最高刑が科されることもあります。
このように、背任罪の刑期は被告人の事情によって大きく変動しますが、常に重大な犯罪として厳しく処罰されることが特徴といえるでしょう。
背任事件に巻き込まれない対策

防止方法の概要
企業において背任行為、あるいは違背行為は深刻な刑事事件です。経営者や幹部社員の不正行為により、会社の利益が損なわれ、ステークホルダーに大きな被害が及ぶことがあります。そのため、従業員一人ひとりが背任事件に巻き込まれないよう、日頃から注意を払う必要があります。
まずは、会社の意思決定プロセスを理解することが重要です。経営陣による重要な判断は、取締役会等の意思決定機関を通じて行われます。その手順や審議内容を把握し、適正な意思決定が行われているかを確認することが大切です。
次に、自身の権限と責任の範囲を明確にする必要があります。職位に応じた権限と責任が定められており、それを超えた行動は背任行為につながる可能性があります。自分の役割を正しく理解し、適切な行動を心がけましょう。
さらに、コンプライアンス意識を醸成することも重要です。法令や社内規程を遵守し、倫理的な行動をとることが何よりも大切なのです。経営陣の姿勢を踏まえつつ、自らもコンプライアンス意識を持ち続けることが不可欠です。
背任への誘惑に負けない
一方で、個人の利益と会社の利益が対立する状況に陥ることもあります。そのような場合、個人の利益を優先させてしまいがちです。しかし、背任行為は重大な犯罪行為であり、断じて許されるものではありません。
会社の利益を損なうような行動は避け、常に会社の利益を最優先にする姿勢が必要不可欠です。単に上司の指示に従うだけでなく、自らの倫理観と社会的責任を意識し、適切な判断と行動をすることが重要です。
とはいえ、あなたが一方的に不利益な立場に立たされ続けるのは違います。きちんと会社側と交渉して、あなたの権利を主張する機会をもらうようにしましょう。そうでなければ、弁護士等外部の専門家に相談するのがよいでしょう。
もし不正行為を発見した場合は、内部通報制度を積極的に活用することをおすすめします。匿名での通報が可能な場合もあり、通報者保護も徹底されています。自らが背任に手を染めるのを避けるとともに、組織全体のコンプライアンス向上にも寄与できるのです。
背任事件を早期発見する
さらに、組織として背任事件の早期発見に努めることも重要です。経営指標や財務データ等に異常な兆候がみられないか、常に注意を払う必要があるのです。
内部監査部門との連携を強化し、定期的な監査を受けることで、組織内部の問題点を把握できます。必要に応じて外部の専門家にも相談し、客観的な評価を求めることも有効な方策です。
このように、自らが背任に手を染めないことはもちろん、組織全体で背任事件への巻き込まれを防ぐ取り組みを行うことが何より重要です。コンプライアンス意識の醸成、内部通報制度の活用、内部監査の強化等、様々な施策を組み合わせて推進することで、背任リスクを最小限に抑えることができるはずです。
まとめ
今回の記事では、背任罪と景気について詳しく解説させて頂きました。万が一、背任罪で逮捕されてしまった場合は、この記事で解説した方法を使って、保釈、釈放手続きを行なってください。状況によっては、最小限の問題で解決することもできるかも知れません。

この記事の著者:探偵社PIO 人事/労務信用調査担当 K.A
社員の不正、登用人事でのバックグラウンド調査や採用調査など人事労務に関連する調査を長年行う。
関連タグ: 背任罪
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。