背任罪とは?従業員が業務命令や法律に背いて背任行為をしたときの対処法

信頼していた社員が背任行為をして会社が損害を被っていたことが判明した場合、その背任行為がいつからいつまで行われていたのかによって、状況が変わってきます。この記事では、法律で定められている背任罪の時効についてお話しします。背任罪に時効がある場合、背任を行った社員を訴えられなくなってしまいます。その対策を知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

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背任罪の時効と刑罰は?

背任罪の時効は?

背任罪の公訴時効は、5年と定められています。背任行為が行われて5年を過ぎると、検察官が起訴して罪に問えなくなります。ただし、一般的に時効のカウントがはじまるのは、背任行為が終えた時からとなります。そのため、明確にこの日から時効が成立すると判断するのは、非常に難しいのです。判明した時点で弁護士などに相談をした方がいいでしょう。

また、会社の社長や役員が該当する特別背任罪の場合は、公訴時効が7年と定められています。

背任罪の刑罰は?

背任罪の刑罰は、5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です。前科があったり、会社に大きな金額の損害を与えたりしたとなる場合、罰金ではなく実刑判決が下る可能性が高くなります。

ただし、会社の社長や役員が行う特別背任罪の場合は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金となります。背任罪と比べると、会社に対しての損害が大きくなるということを考慮して、特別背任罪は非常に刑罰が重いのです。

ちなみに背任罪・特別背任罪に似た犯罪として業務上横領罪があります。業務上の横領罪の刑罰は10年以下の懲役(罰金刑なし)となっているため、似たような犯罪ではありますが、業務上横領罪の方が重い刑罰になっています。

背任罪はどんな時に成立する?

背任罪は立証するのが難しいとされています。もともと自分が悪いことをしているということを分かっていて背任するわけですから、会社に発覚しないようにするために綿密に計画を立てていることが予想されます。周りに強い警戒心を抱いて証拠を残さないようにしているため、なかなか立証するのは難しいといえます。そもそも背任罪が成立するのは、次の4つがポイントになります。

他人のために事務処理を行っている

背任行為を行う人は、もともと事務員など他人のために事務処理を行っているということが前提になります。一定の権限を与えられており、会社から財産の管理をするよう任されている事務処理者となります。

任務違背行為

背任とは名前の通り任務に背くことを指しています。会社は社員に対して、信用して任務を与えており、会社と社員は信任関係にあるといえます。その信任関係を裏切って会社に対して損害を与えるということを、任務違背行為といいます。

図利加害目的

背任行為が会社のためなのか、それとも第三者もしくは自分のためなのかといった目的も重要なポイントとなります。

パターンとしては次のようなものが挙げられます。

  • 会社への損害
  • 第三者や自分のための利益
  • 実は会社のためになると信じての行為

結果として、会社の利益につながったとされれば、背任罪は成立しません。

自分、もしくは第三者の利益のために背任行為を行った場合、利益は必ずしも経済的なものだけに限られません。社会的な身分や信用、立場などが含まれます。ただ、会社の利益になると本人が信じて行った、あるいは勘違いして行ったことであれば、背任と認められないケースもあります。

財産上の損害

背任罪において注意しなければならないのは次の二つです。

  • 損害としてトータルの会社の財産が減少したか
  • 得られるはずだった利益を得られなかった

これらが、背任罪が成立するかどうかのポイントになります。たとえ背任行為で会社に損害を与えたとしても、別の機会で財産を得て財産が減少しなければ、背任罪は成立しません。要は、1回の取引で判断をせず、長期的に見た判断がされるというわけです。

以上の四つのポイントが全て成り立たなければ、背任罪と認められません。会社の社長や役員が行う特別背任行為に関しても、同じように以上の四つが成立する必要があります。ここでは大まかに説明をしましたが、実際はもっと細かく判断をしていきますので、一概に背任罪と認められる・認められないといったことは言えません。弁護士などに相談をすることが必要です。

会社の背任行為を見つける方法

監査

会社における不正行為や背任行為を発見するには、内部監査と外部監査の両面からアプローチすることが重要です。

内部監査の役割と手順

内部監査は、経営者の指示に基づいて会社の業務全般を点検し、リスクの把握や改善点の提案を行います。内部監査の主な手順は以下の通りです。

  1. 監査計画の立案:監査対象部門や項目の選定、監査の目的と範囲の設定を行う
  2. 現地調査:実地に現場を訪問し、帳簿や書類の確認、あるいは関係者へのヒアリングを行う
  3. 結果の分析:調査事項を整理し、経営者に監査結果を報告するとともに、改善提案を行う

内部監査には、会社の業務プロセスや内部統制の状況を適切に評価する重要な役割があります。適切に機能していれば、背任行為の発見につながる可能性が高くなるのです。

外部監査の重要性

一方、外部監査は、公認会計士や監査法人が、会社の財務諸表が適正、第三者的な立場から評価するものです。外部監査では、以下のような点に着目して検証が行われます。

  • 会計処理:収益、費用、資産、負債などの会計処理が会計基準に沿って適正に行われているか
  • 内部統制:業務プロセスにおける内部統制が適切に機能しているか
  • 不正リスク:不正の兆候がないかを慎重に検討する

外部監査の結果は、監査報告書として公表されます。この報告書を確認することで、会社の経営状況や内部統制の状況を客観的に把握できるのです。また、外部監査実施社は多くの他社の事例を知っているでしょう。差し支えない範囲で、事例を聞くのもよいでしょう。わかりやすく説明してくれるかもしれません。

監査報告書の確認ポイント

監査報告書を確認する際の主なポイントは以下の通りです。

  • 監査意見:無限定適正意見、限定付適正意見、不適正意見、意見不表明のいずれかが示されている
  • 監査上の主要な検討事項:監査人が特に重要と判断した事項が記載されている
  • 内部統制監査の結果:内部統制の有効性に関する監査人の評価が示されている
  • 強調事項:監査人が特に注意を喚起したい事項が記載されている

監査報告書の内容を十分に検討することで、会社の抱える問題点や背任行為のリスクを把握することができます。

ちなみに監査意見は次のように分類されています。

  • 無限定適正意見:一般的な基準に照らし合わせて全体的に不適切な事項はないという評価
  • 限定付適正意見:一部不適切な事項はあるが、全体に影響を及ぼすほどではないという評価
  • 不適正意見:不適切な事項があり、全体的な影響を及ぼしているという評価
  • 意見不表明:監査が実施できない、あるいは十分な証拠がなく評価できない状態

内部通報制度

内部通報制度の目的と仕組み

内部通報制度とは、従業員が組織内の法令違反や不正行為を発見した場合に、上司や専門部門に通報できる仕組みです。この制度の目的は、早期発見と早期是正を通じて、組織の健全性を維持することです。

具体的な通報の手順は以下の通りです。

  1. 通報窓口の設置:社内や社外に通報窓口を設け、通報者の秘密を厳守する
  2. 通報の受付と調査:通報内容を迅速に確認し、事実関係の調査を行う
  3. 是正措置の実施:問題が確認された場合は、速やかに是正措置を講じる
  4. 通報者の保護:通報者に対する不利益な取り扱いを禁止する

内部通報制度が適切に機能すれば、従業員の目を通して、会社内部の不正行為を早期に発見できる可能性が高まります。

内部通報の手順と体制

内部通報の手順は、まず通報者が通報窓口に通報内容を伝えることから始まります。通報窓口は、社内の専門部門(コンプライアンス部門等)や社外の弁護士事務所など、通報者のプライバシーと秘密が守られる場所に設置されます。

窓口で通報を受けた場合は、速やかに事実関係の確認を行い、問題が認められた場合は是正します。さらに、通報者に対する不利益な取り扱いの有無も確認し、必要に応じて保護措置を取りましょう。

このように、内部通報制度には公正性と透明性が求められます。組織としても、不正行為の発見と是正に向けて、積極的に制度の整備と運用に取り組む必要があります。

内部通報者の保護

内部通報制度を機能させるためには、通報者に対する保護が不可欠です。会社は、通報者に対する解雇、降格、減給など、あらゆる不利益な取り扱いを禁止し、通報者のプライバシーと秘密を厳格に守らなければなりません。

さらに、通報後の報復行為を未然に防ぐために、通報者の担当業務の変更や人事異動などの措置を講じることも重要です。この保護措置によって、従業員が安心して内部通報できる環境が整備されます。

内部通報制度が適切に機能すれば、組織内部の不正行為を早期に発見し、是正することができます。そのためには、通報者保護の徹底が不可欠です。

 財務確認

財務諸表の分析ポイント

会社の経営状況を把握し、背任行為の兆候を発見するには、財務諸表の分析が重要です。主な分析ポイントは以下の通りです。

収益性の分析
  • 売上高、売上総利益率、営業利益率などの推移を確認し、異常な変動がないかチェックする
  • 主要な収益源の動向を把握し、収益構造に変化がないかを確認する
資産・負債の分析
  • 現金・預金、売掛金、棚卸資産、固定資産などの推移を確認する
  • 借入金、仕入先への支払手形、未払金などの推移を確認する
  • 資産と負債のバランスに大きな変化がないかをチェックする
キャッシュ・フローの分析
  • 営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュ・フローの推移を確認する
  • 営業活動によるキャッシュ・フローの水準が適切かを評価する

これらの指標を総合的に分析することで、会社の経営実態や財務の健全性を把握し、背任行為の兆候を見逃すことなく発見できます。

経営指標の確認と評価

財務諸表の分析に加えて、主要な経営指標の確認と評価も重要です。

ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)などの収益性指標、棚卸資産回転率や売掛金回収期間などの効率性指標、D/E比率(負債比率)などの安全性指標を確認し、業界水準と比較しながら評価します。

これらの指標が業界平均や過去実績から大きく乖離している場合は、何らかの問題が発生している可能性があります。

さらに、資産や負債の各科目について、一定期間の推移を確認することで、経営状況の変化を早期に掴めます。

異常な数値変動の発見

財務諸表や経営指標の分析では、数値の異常な変動に着目することが重要です。

たとえば、売上高が急激に伸びているにもかかわらず、売掛金が増加していないような場合は、売上の計上に問題があるかもしれません。

一方で、棚卸資産が大幅に増加しているのに売上が伸びていないなど、資産と収益のバランスが取れていない場合は、在庫管理に課題があると考えられます。

このように、財務数値の変動パターンを分析し、異常な兆候を捉えることが、背任行為を発見する上で重要なポイントとなります。

棚卸

棚卸の意義と実施方法

会社の背任行為を発見する上で、棚卸は極めて有効な手段の一つです。棚卸とは、一定時点における会社の在庫数量を現地で確認する作業です。

棚卸を実施することで、以下のような点を確認できます。

  • 在庫数量の正確性:帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量に差異がないか
  • 在庫の状態:陳腐化や損傷した在庫がないか
  • 在庫管理の適切性:発注、保管、出庫などの在庫管理体制が適切に機能しているか

棚卸は、通常年に1回以上実施されますが、不正の疑いがある場合は臨時の棚卸を行うことも重要です。

棚卸結果の分析

棚卸の結果、帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量に差異が生じた場合、その原因を詳細に分析する必要があります。

主な分析ポイントは以下の通りです。

  • 数量誤りの有無:紛失、勘違いなどによる単純ミスがないか
  • 盗難・横領の可能性:在庫の一部が社内で横領されていないか
  • 不適切な出庫管理:出庫プロセスに問題があり、在庫が流出していないか
  • 仕入先との取り引き:仕入先との間で数量の不一致がないか

差異の原因が明確でない場合や、重大な差異が確認された場合は、さらに詳細な調査を行う必要があります。

在庫管理の問題点の発見

棚卸結果の分析を通じて、在庫管理体制の問題点を発見することもできます。具体的には以下のような点に着目します。

  • 発注・受入れプロセスの適切性:発注、検品、受入れが適切に行われているか
  • 保管管理の状況:在庫の保管場所、方法、管理者の設置などが適切か
  • 出庫管理の厳格性:出庫の承認プロセス、出庫記録の管理が適切か
  • 棚卸の定期性:年1回の定期棚卸だけでなく、臨時棚卸も実施しているか

このように、棚卸を通じて在庫管理の問題点を把握し、速やかに改善を図ることが重要です。また、自社の在庫と取引先が発行する伝票を見比べることも大切です。

背任罪は大きな損失になる

背任罪は放置してしまうと、会社の大きな損失となります。そのため、損失が大きくなる前に、背任をしている社員を見つけ出す必要があります。

そもそも会社にとっての損失をもたらすという時点で大きな打撃ですが、背任罪の5年という時効をむかえてしまっている状況では、背任罪を行った社員を刑事事件で訴えることはできません。損害賠償を請求することはできても、莫大なお金になればなるほど回収は難しくなるのです。

長い間、証拠を隠しながら背任を行い続け、会社に損害を与えつつ自分は利益を得ている人も中にはいますが、その利益分が必ずしも自分の資産として残っているとは限りません。もしかすると使い込んでいる可能性も大いにあります。

背任罪は、発覚しないように計画的に行われているケースが非常に多い傾向にあります。そのため、証拠をつかむのはとても難しいのです。それでも会社の中で怪しいと思う人物がいたり、お金の流れに疑問を思ったりしたら調査するべきです。

会社の人間が調査を行うのも一つの方法ではありますが、調査のプロである探偵に任せることも大切です。アドバイスをもらえるだけでなく、早い段階で怪しい人物を探し出すことが可能です。

探偵の中には背任に関する調査に長けている探偵事務所もありますので、事前にそういった強みのある探偵事務所を探して契約してみてはいかがでしょうか。また、探偵事務所のなかには、弁護士事務所を紹介してくれるところもあります。

まとめ

背任罪の時効は5年ですが、会社が知らないうちに損失を被っているということは十分にあり得ます。時効を迎えてしまえば、相手を訴えられなくなってしまいますし、気づかず放置し続ければどんどん損失は拡大してしまいます。怪しいと感じることがあれば、確固たる証拠がなくても調査を行うのがおすすめです。プロに調査を依頼した方が確実ですので、探偵事務所を利用して解決してもらいましょう。

専門家監修

この記事の著者:探偵社PIO 調査員 Y.K

調査歴10年。
年間200件以上もの調査を行う。

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探偵社PIO編集部監修

本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

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