背任罪と特別背任罪の違いとは?法律の内容もふまえて解説

この記事では、社員による背任行為の損失を大きくしないためにはどうしたらいいのかについてお話します。背任行為が疑わしく損失が大きくなりそうな場合、どう見抜いて止めたらいいのか、また再発防止のために会社としてできることはないのか知りたいという方は参考にしていただけると幸いです。

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背任を見抜くのは難しい

背任は自分や第三者の利益のため、もしくは特定の人物に損失を与えるために任務に背くことです。会社にとって不利益になると知りながら、自分や第三者への利益のために契約を結んだり、会社の機密情報を漏洩したりすることをいいます。

背任行為を立証するのは難しいとされているのには理由があります。自分自身が悪いことをしているというという認識の下で行われる行為なため、綿密に計画を立てているケースが多いためです。そのため、自分が背任行為をしているということが明るみにならないよう細心の注意を払っており、なかなか見抜くのは難しいのです。

損失を大きくしないためには?

ターゲットとなる社員の調査を行う

社員が背任調査を行っていることが疑わしい場合、調査のターゲットとなる社員に対して同じ会社の社員が調査を行うこともできます。ですが、背任を行っている社員は会社が分からないように綿密な計画を立てて背任行為をしているため、会社で背任の証拠となるデータを見つけ出すのは非常に難しいでしょう。

そこで調査を専門に行う探偵に依頼して、ターゲットとなる社員の調査を行うことをおすすめします。探偵は調査のエキスパートです。そのため、次のような調査が期待できます。

  • ターゲットの調査(素行・行動・資産)
  • どの会社(あるいは誰)に情報を漏らしたのか
  • どの会社の誰とつながりがあったのか
  • ターゲットが作成する会社の書類に不自然な点がないか

調査ターゲットが営業などで外回りが多い時などは、尾行して調査を行う他、ターゲットがきちんと仕事をしているのか確認するのはもちろん、社外で誰とあっているのか、どのような会社とつながりがあるのかといった情報を得られます。

さらに、探偵は必要に応じて会社への潜入調査を行うこともあります。会社に潜入してターゲットを追いますが、怪しまれずに潜入できるよう会社側は配慮が必要となる場合があります。

背任を行う社員は、同僚をはじめとする周りの社員に、自分のやっていることが分からないように神経を張り巡らせています。もちろん、背任行為の期間が長くなれば長くなるほど、明るみになるリスクは大きくなります。しかし、周りの上司や同僚を警戒して敏感になっている場合が多いため、細心の注意を払って調査する必要があります。

ターゲットは、周囲に怪しいと思われていることが分かると、より警戒をするため、調査にも支障が出ます。そのため、潜入する探偵やターゲット以外の社員は、可能な限り平然を装って過ごすことが重要です。ついターゲットばかり目で追ってしまうかもしれませんが、そうすると調査にしていることをターゲットに気付かれる可能性があります。

なぜ、背任行為が起こるのか?

そもそも、なぜ背任行為が起こるのでしょうか?原因を考えてみましょう。

組織の文化的背景

世間の会社にはさまざまな文化があります。特に大企業ともなれば同じ会社の中であっても、部署によって文化が異なる場合もあるでしょう。厄介なことに、文化というのは外の世界から見てはじめて特徴が分かるものです。そのため、組織の中にいると良くも悪くもその特徴に気付かないことがあるのです。

文化には良い文化もあれば、そうでない文化もあります。しかし、悪い文化ほど脈々と受け継がれているものです。昨今問題になっている大企業のコンプライアンスでも、紐解けば10年以上前から不正が行われていたケースもありました。

もし、組織の中に「多少の背任なら黙認する」といったような文化がある場合、それは受け継がれていきます。新入社員や中途入社の社員など、その部署の文化を知らない人が組織に入るとはじめはおかしいと感じるでしょう。しかし、そういった文化は人の感覚を麻痺させるため、次第にはじめはおかしいと思っていた人でも、同じ様に背任行為を行うようになることがあります。

会社の経営状態

会社の経営状態が悪いと、社内の雰囲気が悪くなることもあります。賞与の金額が少なくなりやがてカットされ、今まで承認されていた経費が認められなくなり(持ち出しになり)、最終的には給与の未払いが発生する。このような状態になると、会社に対する社員の信頼はほぼなくなるでしょう。

ときに会社員は「自分さえよければ」という考え方に陥りがちです。また、「相手が悪いなら、何をやってもよい」という集団心理に陥ることもあるでしょう。そして、経理担当者などと結託して会社のお金を不正に引き出すといって行為に及ぶのです。

管理体制の不備

中小企業の場合、あまり金銭管理が得意でない社長が、経理担当者に会社のお金の管理を一任している場合もあるでしょう。その経理担当者は役員でなく、しかも人員の都合上その経理担当者に対するチェック機能がない場合もあるでしょう。このような場合、背任行為が行われるかは、経理担当者の人格によって決まることになってしまいます。

もちろん、はじめから背任行為を行おうとして入社する人はいないでしょう。しかし、上記のような管理体制の場合、経理担当者のさじ加減一つで背任行為ができてしまうのです。もし、背任行為を起こした場合、悪いのはもちろん経理担当者ですが、管理体制の不備をそのままにしていた会社側にも責任はあるでしょう(法的責任ではない)。

個人の欲求

社会で働く人の中には、残念ながら自身や第三者の利益のために会社に損害を与える人がいます。そういった人がお金の管理を任された場合、背任行為にあたる確率が高くなるのです。また、「個人の欲求」は一概に悪いものだけを指す訳ではありません。たとえば、銀行の融資担当者が「返してもらえる見込みはないけど、どうしても応援したい企業がある」など、個人的な感情を優先させて、返済能力を十分に検討しないまま融資を行うこともあります。

背任罪と特別背任罪の違いは何か?

与えられた業務に対して、会社にとって不利になる行為をするのが背任行為です。それでは、背任罪(刑法247条)と特別背任罪(会社法960条)では何が異なるのでしょうか?

背任罪の成立要件

背任罪が成立するには、次の4つの要件を満たす必要があります。

  • 他人のために事務を処理する者
  • 自己若しくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を加える目的
  • 任務に背く行為
  • 本人に財産上の損害を与えること

他人のために事務を処理する者

会社員の背任罪を想定する場合、「他人」とは多くの場合会社(法人)のことを指します。あるいは業種によってはお客様が「他人」に該当する場合もあるでしょう。いずれにしても、他人の(自己以外)の事務処理が対象になります。

また、ここでいう「事務」とは財産の移動を伴うもののみを指します。たとえば、簡単な(財産とは関係のない)データ入力を上司に指示されたとき、その指示内容やあるいは指示そのものに背いたとしても背任罪になりません。

「他人」と「事務」の条件は両立(AND条件)するものです。そのため、たとえば自身の出張旅費の経費申請を怠った場合は、背任罪に該当しません。

自己若しくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を加える目的

背任罪では、行った行為の目的を重視されます。たとえ本人に損害を与えたとしても、自身や第三者の利益を与える、あるいは本人に損害を与えるという明確な目的があったと認定されなければ、背任罪にはなりません。

また、ここでいう利益とは必ずしも財産のみを示すものではありません。会社の信用や面目も含まれますので注意して下さい。ただし、上場会社であれば信用や面目を失えば多かれ少なかれ株価に影響を与えるため、結果的には経済的な損失を与えることになります。

場合によっては自己と第三者、そして本人の損害を両立させようと思っている場合もあるでしょう。その場合は、どちらも目的がより重視されているかということが、問題の焦点となるようです。

任務に背く行為

「任務に背く」というのは結果で判断されます。そのため、会社から求められていたレベルの仕事ができずに任務に背いたと判断された場合、求められるレベルは法令や契約によってことなります。

本人に財産上の損害を与えること

「財産上の損害」は使ってしまい、返ってこないお金だけではありません。本来得られるはずだった利益を失わせた場合や、本来返還の見込みのない融資なども「財産上の損害」に含まれます。また、背任罪は未遂の場合、「背任未遂罪」という別の犯罪になり罪に問われます。

特別背任罪の成立要件

特別背任罪の成立要件は次のようになっており、背任罪と非常に似ています。

  • 自己若しくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を加える目的
  • 任務に背く行為
  • 株式会社への財産上の損害

1つ目と2つ目の成立要件は背任罪と同様です。しかし、3つ目の要件は特別背任罪のみに適用される要件であり、「本人」が株式会社に限定され、罪に問われるのは役員などに限定されるのです。そのため、特別背任罪が成立するのは、次のような人です。

  • 発起人
  • 設立時取締役、設立時監査役
  • 取締役、会計参与、監査役、執行役 等

これらの職務に就く人が背任行為を行った場合、特別背任罪に問われることがあります。

背任罪と特別背任罪の違い

表1に、背任罪と特別背任罪の違いを示します。

表1.背任罪と特別背任罪の違い

背任罪特別背任罪
行為者他人のために事務を処理する者会社役員など権限が強いもの
刑罰5年以下の懲役、又は50万円以下の罰金10年以下の懲役、又は1,000万円以下の罰金、又はこれら両方
公訴時効期間5年7年

役員は一般社員に比べて業務上の権限が大きく、本人の考え一つで会社に大きな損害を与えるリスクを孕んでいます。そのため、罪そのものの重さを数値で測ることはできませんが、背任罪に比べて特別背任罪の方が重い刑罰になっているのかもしれません。

経営者(社長)は、社内のすべてのことに対する責任を負います。不幸にも背任行為にあった場合でも、そのような社員を入社させた責任は社長にあります。とはいえ、自分の知らないところで会社に損害を与えられるのは、腹立たしいことでしょう。どのような人材を求めるのか、あるいはどのような人材を入社させるのかは、背任という視点から見ても難しいものなのです。

背任行為再発防止のための対策は?

社内で背任行為が起こったことを公表すると、会社の信用問題に関わってきます。そのため、できるだけ公にしたくないという会社も多いのが現状です。公にしないということで、さらなる会社の損失を防ぐことが出来る一方で、今度は別の社員が背任行為をして、新たな被害者を生む可能性も十分あります。会社はその対策を十分に考えなければなりません。

社員が働きやすい環境になるような会社の努力

背任行為は、自身や第三者への利益を与える目的以外にも、会社に損害を与えるために行う場合もあります。そのため、社員の中には、業務に追われたり精神的に追いつめられたりしていて、背任行為を行ってしまう人もいるのです。社員すべての希望をかなえるというのは難しくても、会社は社員の意見に耳を傾け、働きやすい職場環境を作る努力をしなければなりません。

社内のルールの見直しと周知徹底

社内のルールを見直しそれを周知徹底することで、背任行為をした場合どのような罰則があるのか、また社内に対して調査が入るため犯した罪から逃げられないことを発信し、そもそも「背任行為は割に合わない」と思わせることも大切です。

ただし、威圧的に感じるような周知徹底は逆に反発を招きかねませんので、社員が働きやすい環境を作りつつ、平行して周知徹底することが大切です。

背任行為どうか怪しい段階でも探偵に相談

どれほど会社の環境をよくしてルールを周知徹底しても、背任行為を行う人はいます。人間はその時置かれている状況によって、普段なら考えられない行動をとることもあるのです。

そのため、明確に特定の社員が怪しいといえる段階でなくても、会社の中で不審な動きがある場合、探偵に調査を依頼するのも一案です。調査の方法や証拠収集の方法の相談に乗ってもらえ、怪しい社員の洗い出しもしてくれます。

背任行為を早急に確認すれば、会社の損失を最低限にすることもできます。反対に損失が大きくなれば業績だけでなく、会社の信用も失います。また、気が付かないうちに背任行為が繰り返された結果、時効になってしまい訴えられないこともあります。

大きな会社ほど全ての社員に目が行き届きにくいでしょう。調査のプロに相談をしながら背任行為の対策と対処を考え、損失を防ぐことが大切です。

まとめ

この記事では、社員の背任行為による損失を最小限にする方法を解説しました。たしかに背任行為を見抜くのは難しいですが、何も対策しないでいると、知らないうちに損失は大きくなり、会社の信用も失ってしまいます。取り返しがつかなくなる前に、怪しいと思ったら探偵の力を借りて調査することをお勧めします。また、背任行為が発覚した後は、忘れずに再発防止策を取りましょう。

専門家監修

この記事の著者:探偵社PIO 調査員 Y.K

調査歴10年。
年間200件以上もの調査を行う。

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探偵社PIO編集部監修

本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

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