解雇権の濫用とは?問題社員の解雇が認められるケースをパターン別に解説【元弁護士が解説#12】

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問題社員を解雇したいと思っても、法律上、解雇は簡単には認められません。「解雇権の濫用」とみなされると、解雇が無効になってしまうからです。

今回は企業が従業員を解雇できる要件や解雇が認められるケース、認められないケースを具体的なパターンごとにご紹介します。

問題社員を抱えてお困りの経営者さまは、ぜひ参考にしてみてください。

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企業が従業員を解雇する要件

企業が従業員を解雇するには、厳しい要件をクリアしなければなりません。

以下の3つがポイントとなります。

法律上、解雇が禁止されないこと

法律上、解雇が認められないケースがいくつかあります。例を挙げると以下のとおりです。

●男女差別にもとづく解雇

●思想信条にもとづく解雇

●育児休業や介護休業を申し出たことによる解雇

●労働組合活動による解雇

●労災による休業中やその後30日間の解雇

●産休中やその後30日間の解雇

上記のような解雇をすると、詳しい要件を検討されることもなく「無効」となります。

解雇予告、解雇予告手当給付を行うこと

解雇するときには、30日前に解雇予告をするか、不足日数分の解雇予告手当を支給しなければなりません。

懲戒解雇するケースでも、労基署で除外認定を受けない限りは解雇予告の対応が必要です。

解雇予告の対応をしなければ労働基準法違反となって罰則も適用されるので、くれぐれもきちんと対応しましょう。

解雇権の濫用にならないこと

3つの要件の中で実際にトラブルのもとになりやすいのは「解雇権の濫用」の要件です。

解雇権の濫用とは、雇用者の恣意的な解雇によって労働者に不当な不利益を及ぼすこと。労働者が解雇されると生活に大きなダメージが及ぶので、法律上、解雇は厳しく制限されています。

上記の2つの要件を満たしていても解雇権の濫用と判断されると解雇が無効とされてしまいます。

よく「解雇予告手当を払ったから解雇は有効」と考える経営者の方がおられますが、それは間違いです。解雇予告手当を払っても「解雇権の濫用」になったら解雇が認められないので、事前に解雇要件を満たすかしっかり検討しましょう。

解雇権の濫用の判断基準

解雇権の濫用については、労働契約法16条にその内容が規定されています。

労働契約法

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

つまり以下の2つの要件を満たさない限り、解雇が認められません。

●解雇に客観的合理的な理由がある

●社会通念上相当な方法で解雇した

客観的合理的な理由とは

客観的合理的な理由とは「解雇もやむをえない」重大な事情です。

たとえば従業員が会社のお金を横領した、長期にわたって無断欠勤を続けて連絡をとれないなどの事情があると「客観的合理的な理由」が認められやすくなります。

一方で「他の従業員より成績が悪い」という程度では、客観的合理的な理由は認められません。

社会通念上相当な方法とは

社会通念上相当な方法とは、従業員を解雇する際の手続的な保障です。いきなり解雇するのではなく解雇以外の解決方法を検討したり自主退職を促したり弁明の機会を与えたりして、雇用を維持する努力をしなければなりません。

解雇が認められるケースと認められないケース

以下では「よくある問題社員」のパターン別に、解雇が認められるケースと認められないケースの具体例をみていきましょう。

遅刻、早退、欠勤を繰り返すパターン

遅刻、早退や欠勤を繰り返す従業員がいる場合、解雇したいと考えるのも当然です。

ただ遅刻や早退、欠勤があるからといって必ずしも解雇できないので注意しましょう。

解雇が認められるのは、以下のようなケースです。

●無断欠勤が2週間以上続いている

●長期間無断欠勤したため、会社の営業に重大な支障が発生した

裁判例では、普段から勤務態度が悪く半年間に30日以上無断欠勤した従業員の解雇が有効と判断されたケースもあります(横浜地裁昭和56年6月26日)。

以下のようなケースでは、解雇が認められない可能性が高くなります。

●上司が暴行を振るったために部下が出勤できなくなって無断欠勤してしまった

●遅刻や早退が目立つが、出勤はしていて仕事もこなしている

●数回無断欠勤したが、常態化はしていない

無断欠勤、遅刻が多いからといって安易に解雇通知を送ってしまわないよう、注意しましょう。

犯罪行為をしたパターン

従業員が犯罪行為を行って「刑事事件」になったら解雇できると考える方も多いでしょう。しかしこの場合でも、必ずしも解雇が有効になるとは限りません。

交通事故の場合

営業車の運転中など、従業員が交通事故を起こしてしまうパターンがあります。交通事故も「自動車運転処罰法」によって罰される犯罪行為です。また飲酒運転やスピード違反、ひき逃げなどで「道路交通法違反」となってしまう事例もあります。

従業員が交通事故を起こしたからといって、簡単には解雇できません。タクシーやトラック、運送業などのドライバー職であっても同様です。免許停止、取消処分を受けたとしても、まずは内勤に変えるなどの工夫が必要となるでしょう。

一方、悪質で会社の信用を大きく傷つけた場合には解雇が認められる可能性があります。たとえばバスの運転手が飲酒運転によって死亡事故を起こした場合などでは、解雇が認められやすいでしょう。

会社のお金を横領した場合

従業員が会社のお金を横領して刑事事件になってしまうケースも多々あります。

この場合、従業員の行為は会社への重大な裏切りといえます。会社には「実損害」も発生するので、比較的解雇が認められやすいといえるでしょう。

横領の場合、少額でも解雇できる可能性があります。

ただ懲戒解雇するには、就業規則で懲戒規定をもうけておかねばなりません。トラブルに備えて日頃からニーズに合った就業規則を策定しておくことが重要です。

社外の刑事事件の場合

痴漢や盗撮、万引きや暴行など、社外で刑事事件を起こす従業員も少なくありません。自社の従業員が問題行動によって逮捕されたら、解雇できるのでしょうか?

この場合、まずは「有罪が確定」しない限り解雇できません。逮捕された段階では、本当に罪を犯したかどうかが法的に明らかになっていないためです。

きちんと刑事裁判が行われて「有罪判決」が出て確定してはじめて「罪を犯した」といえます。その前に解雇すると、無効になってしまう可能性があるので注意しましょう。

また有罪になったからといって必ず解雇できるとは限りません。会社の業務や信用とは無関係な小さい万引きや住居侵入などの場合、解雇までは認められないでしょう。

一方、殺人未遂や凶器準備集合罪、オレオレ詐欺に加担した組織的な詐欺罪などの重大なケースでは解雇が認められやすいと考えられます。

経歴詐称のパターン

従業員が経歴詐称して問題となるケースも多々あります。

学歴や職歴について経歴詐称があったからといって当然に解雇できるとは限りません。

経歴詐称で解雇できるのは、詐称されていた経歴が雇用契約の重要な前提条件となっていたケースに限られます。

たとえば以下のような場合には解雇が認められやすいでしょう。

●エンジニアとして採用したのにエンジニアのスキルがまったくなかった

●英語能力を買って採用したのに実は英語がわからなかった

●前職での実績や特殊なスキル、資格を買って採用したのに、すべて嘘だった

単純に「学歴」「前職の内容」について虚偽を述べただけであれば解雇は認められない可能性が高いといえます。

借金があるパターン

従業員に借金があると、解雇できるのだろうか?と考える経営者の方がいます。

借金していても原則的には解雇できない

法律上「借金している」だけでは解雇できません。借金を抱えていても仕事をきちんとこなしているなら会社には迷惑がかからないからです。

以下のような事情があっても、解雇までは認められません。

●サラ金から借金して返済できていない

●債権者から会社へ督促の連絡がきて迷惑している

●会社の給料を差し押さえられた

●自己破産を申し立てた

借金を理由に解雇できるケースとは?

以下のような事情があれば、借金による解雇が認められる可能性があります。

●本人が同僚や上司、部下から借金をして返済せず、社内で大きなトラブルを起こしている。会社側が是正を求めても対応せず、同じ問題を繰り返して他の従業員のモチベーション低下を招いている

●借金して夜逃げしてしまい、連絡がつかなくなった

従業員に借金で困っている様子があれば、まずは事情をよく聞いてアドバイスをしましょう。本人の努力でどうにもならない段階に来ていたら、弁護士や司法書士に相談に行くよう促してみてください。

パワハラ、セクハラを繰り返すパターン

パワハラやセクハラを繰り返し、社内の秩序を乱す従業員も少なくありません。

ハラスメントの加害者であっても、簡単には解雇できないので注意しましょう。解雇する前に本人に是正を促し、他の部署に配置転換するなどの工夫が必要です。

解雇が認められやすいのは、以下のような場合です。

●何度注意してもハラスメント行動を改めない

●減給、降格、出勤停止などの他の懲戒処分を行っても改善がみられない

●セクハラやパワハラが極めて悪質で被害が大きい

服装や身なりが異様なパターン

制服を着用しない、ネクタイをつけない、異様な色に髪を染めるなど服装や身なりが異様な従業員を解雇できるのでしょうか?

基本的には難しいと考えられます。なぜなら法律では服装や身だしなみなどの自己表現方法は個人の自由とされるためです。服装や身なりが「非常識」と思われるケースでも、解雇までは認められない可能性が高いと考えましょう。

ただし営業職には最低限の身なりが必要ですし、制服や制帽の着用など、一定の規制が必要な場面もあるでしょう。そういったルールをどうしても守らない従業員に対しては、解雇までは認められなくても降格、配置転換や減給処分が有効となる可能性があります。

まとめ

問題社員を抱えたとき、適切に対応しないと重大なトラブルに発展してしまうリスクが高まります。解雇できるかどうか判断がつかない場合には弁護士に相談してみてください。

執筆者プロフィール

福谷陽子
法律ライター 元弁護士
弁護士としての経験は約10年。その経験をもとに、ライターへ転身後は法律や不動産関係の記事を積極的に執筆している。
弁護士時代は中小企業の顧問業、離婚や不倫など男女関係案件の取扱いが多く、浮気調査や探偵事務所の実情にも詳しい。
記事の作成だけではなく、編集やサイト設計、ディレクションやウェブコンテンツを利用したマーケティングのアドバイスなど、活動の幅を広げている。

運営サイト(元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog)
https://legalharuka.com/433

運営youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC-vYz7An9GHWXsXjWKbmRdw

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探偵社PIO編集部監修

本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

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