従業員が背任行為をした時の対処法とは?法律に触れながら背任罪の対応や行う理由などを解説します
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従業員が背任行為をした時の慰謝料請求について解説
従業員に背任行為をされてしまった場合、どういった対処法が正解なのか難しい所です。また、背任行為によって受けた損害をどう取り返すのか、慰謝料請求なども含めて気になる所ですよね。背任行為が起こった時のために、事前にコンプライアンスなどについて把握し適切な対応ができるようにしておくべきです。そこで、今回の記事では、従業員に背任行為をされた時の対処法と、慰謝料請求について詳しく解説していきたいと思います。ぜひ参考の一つにしてみてください。
従業員の背任行為
背任行為とはどんな行為なのでしょうか?ここでは背任罪も含めて、背任行為の具体的な例を交えながら説明していきたいと思います。
背任行為(はいにんこうい)とは
背任行為の背任とは会社や上司の命令を遂行しないことです。。これだけであれば、罪になることはなく、会社からの「社会的制裁」を受けるだけになります。社会的制裁の中には、減給、降格、懲戒解雇などがあり、いずれの場合も従業員にとって大きなデメリットとなります。
背任罪とは
刑法で定められた罪で、「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」といった罰則が定められています。
背任罪の要項に含まれている通り、会社の任務に背いて、個人、もしくは他人の利益を得るために会社に損害を与える行為(金銭的)を行うことで、背任罪という罪に問われることになります。会社に背いて、会社に損害を与える行為は背任罪である、と覚えておくといいでしょう。具体的な構成要件についても触れていきましょう。背任罪になってしまうのは、以下の構成要件をすべて満たした場合に成立します。
- 自己ではなく他人から事務処理を委託されたこと
- 会社の任務に背く行為をしたこと
- 図利加害目的があること
- 背任行為によって相手に財産上の損害を与えたこと
詳しくみていきましょう。
自己ではなく他人から事務処理を委託されたこと
背任罪は自分ひとりでは成立しません。成立に必要な条件は、他人から事務処理を委託された者に限られます。一般的委託の関係は企業に属したり仕事上の契約によって生じるケースが多いものの、法令に基づいて生じるケースも稀にあります。ちなみに、委託された者にフォーカスされがちですが、その行為に関わる補助者や代行者であっても事務処理を行う者として背任罪が成立し得るとされています。
会社の任務に背く行為をしたこと
任務違背行為とも呼ばれていますが、背任罪が成立するケースは、会社や他人のために処理する事務や任務に背く行為とされています。委任されている任務に対し、誠実な事務処理者として全うせず、法的に期待することとは反する行為になります。任務違背行為に該当するかどうかは、法令、通達、定款、内規、契約などが判断基準とされています。
特に業務上の契約など、契約に基づく委託関係が存在する場合には、契約内容に注目します。定められた事務の内容や、事務処理者の責任の内容などを整理して、背任罪に該当するか判断しています。
図利加害目的があること
図利加害目的とは、背任罪の行為者が、自己または第三者の利益を図るか、または他人に損害を与えようとすることです。ただし、本人の利益を図る目的と図利加害目的が併存するケースもあります。この場合は、本人の利益を図る目的と図利加害目的のどちらに重きにあるかによって、背任罪の成否が変わってきます。図利加害目的があっても、背任罪として成立するには、行為者において自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的を有していたことがポイントになる点は覚えておきましょう。
背任行為によって相手に財産上の損害を与えたこと
背任罪が成立してしまうタイミングとしては、本人に財産上の損害を与えた時点です。未遂で終わるケースもありますが、財産上の損害を与えたタイミングで既遂となります。例えば、図利加害目的による任務違背行為が行われていたとしても、本人に財産上の損害を与えていなければ、未遂に終わり、背任未遂罪の判断となります。ポイントになる財産上の損害ですが、経済的見地から本人の財産状態に変化があったのかを評価して行うのが一般的です。
幹部や役員が対象になる「特別背任罪」
背任罪の中には、特定の役職に対して適応される「特別背任罪」が用意されています。基本的な要項に関しては背任罪と同じですが、「特定の役職」に適応されることと、背任罪をはるかに超える罰則が特徴となっています。(10年以下の懲役または1000万円以下の罰金)
これは、会社幹部や役員であれば、社内の財務状況にアクセスできてしまうことと、不正に利益を得る額が通常に比べて圧倒的に多いことなどが理由で制定されたものです。(数百万から数億円の損害事例もある)
特別背任罪は上層部の役員のみにしか適用されないため、通常の一般従業員にこれらの罪が問われることはありません。
背任罪と類似した犯罪との違い
背任罪と類似した犯罪があり、違いについて説明できない人も多いでしょう。類似している犯罪には詐欺罪、横領罪、特別背任罪などが挙げられます。それぞれの犯罪との違いについて解説します。
背任罪と詐欺罪の違いとは
背任罪は会社の任務に背いて、個人、もしくは他人の利益を得るために会社に損害を与える行為に対し、詐欺罪は被害者を騙して財産上不法の利益を詐取する行為にあたります。人を欺いて財物を交付させた者にも詐欺罪は成立します。一番の違いは、背任罪は手段を問われず、任務違背行為の有無に焦点が当てられます。一方で、詐欺罪は人を欺く行為が対象です。ちなみに、背任罪は5年以下の懲役ですが、詐欺罪は10年以下の懲役となるため、刑罰の重さも異なります。
ただし、この二つの罪が重なることもあります。例えば、他人から事務を委託された者が、ある特定の人物を欺いて財物を交付させるようなケースです。この場合には、詐欺罪と背任罪の両方の構成要件が満たされており、昭和7年6月29日に判決した事例もあります。
背任罪と横領罪の違いとは
横領罪は、自己の占有する他人の物を管理等を委託された形でそのまま不法に領得する行為です。さらに自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた物を横領したケースも横領罪が成立することになっています。背任罪と横領罪の違いについてはさまざまな見解がありますが、横領罪は物の不法領得、その他の任務違背行為は背任罪と考えるのが見解として有力とされています。背任罪は5年以下の懲役ですが、横領罪の法定刑も5年以下の懲役です。ただし、業務上横領罪の場合には法定刑が10年以下の懲役に加重されるので、詳細内容も重要となります。
背任罪と横領罪についても、構成要件を満たすことがあります。例えば、他人から事務を委託された者が、管理を委託されたその人の所有物をそのまま不法に領得したり処分してしまったケースです。
従業員が背任行為を行う理由
背任行為を行うことで、会社だけでなく、当事者である従業員にも大きなリスクがのしかかることになります。しかし、それだけのリスクを冒してまで「背任行為」を行う理由とはどういうものなのでしょうか?考えられる理由をまとめてみました。
企業に対する信用の失墜
入社してくる人材の中には、企業に対する「夢や希望」を持って就職する人も少なくありません。そうしたイメージを壊されてしまった時、大きな落胆と絶望感に包まれてしまうものです。多くの人は、その時点で辞職や転職などの方法を考えますが、一部の中には「どうせ辞めるなら、損害を与えてやめる」という思考を持っている人もおり、そうした考えから、背任行為へ進むことがあると考えられます。昨今は就職難と、人材に対する条件が厳しいため、希望の職へ着くことが難しくなっています。そうした中で入社した人にとって、企業に対する信頼関係は非常に重要なポイントとなっています。
多額の借金返済
何らかの理由で多額の借金を抱えており、少しでも返済の足しにするために背任行為を行なっている可能性があります。特に、経理担当や、財務状況を管理している場合、会社の経営状況なども把握できるため、「どれだけ使えばバレないのか」などを計算しながら横領することもあるはずです。背任罪や横領罪は、その性質から「すぐに発覚しない」ことが多く、数年から10年程度もバレないこともあります。そうした理由から背任行為を行う人が減らないのかも知れません。
ライバル企業への転職
条件のいい企業へ転職する際の手土産として、社内情報や財産の一部を着服する背任行為を行う場合もあるようです。ライバル会社としては、「相手が不利になる」ことは、大きなメリットとなるため、損害額が大きければ大きいほど賞賛するでしょう。中には、最初から損害を与えるつもりで入社したスパイもおり、背任行為前提で仕事をしていることもあるかも知れません。
背任行為で慰謝料請求できるか
従業員の背任行為を突き止めた場合、損害賠償請求や、刑事告訴など、いくつかの方法がありますが、慰謝料請求するためには、どの方法がいいのでしょうか。ここでは、いくつかの方法をご紹介したいと思います。
弁護士を立て、話し合いの場を設ける
早期解決ならば、弁護士を立てた「示談交渉」です。相手が罪を認め、損害賠償に応じるようであれば、刑事事件にするよりも「話し合いによる解決」を選んだ方が得策です。背任行為によって、大きな損害額が出ている場合には、分割払いや、給料天引き(引き続き雇う)という方法で回収する術もあります。この方法で慰謝料請求、損害賠償請求を行い、支払いの手続きを行いましょう。万が一、支払いが滞ってしまう、音信不通になってしまうなどの場合は、刑事事件として起訴することもできます。(5年以内であれば逮捕、起訴できる)
刑事告訴する
話し合いに応じない、反省の色がない、損害賠償請求を受け付けない、などの理由で話が進まない場合は刑事告訴を検討しましょう。ただし、この方法を使うと当事者が職を失ってしまうため、損害賠償や慰謝料の請求が非常に困難になります。また、出所したとしても、イメージから職に就くことが難しく、いつまで経っても支払いが始まらないという状況も考えられます。以下の理由から「刑事告訴は最終手段」と考えてください。
背任行為が発覚した時の対処法
万が一、自社の従業員による背任行為が発覚した場合には、初動が大切になります。迅速かつ適切に行うためには、以下が大切になります。
- 事実関係を調査する
- 被害者と示談交渉をする
- 懲戒処分の可否・種類を検討する
- 刑事告訴を検討する
- 身柄の解放に向けた刑事弁護
一つずつ確認していきましょう。
事実関係を調査する
自社の従業員による背任行為が発覚した場合には、最初に背任の疑いに対する事実関係を迅速かつ正確に調査することが大切です。例え、取引先からの申告や自社社員による告発があったとしても、正しい事実関係を把握しなくては適切な対応が行えません。事実関係を調査することで、懲戒処分や刑事告訴など今後の対応や処分を適切に行うことができます。
まずは背任行為に該当する者の関係者を対象にヒアリングを行います。加えて、関連する書類やデータなどを集め、徹底的に調査していきます。正確さを求めたいが故、時間をかけすぎる調査は避けましょう。背任行為の事実が確認された場合に、自社従業員の背任行為を一刻も早くやめさせなければ、自社への大きな損害に繋がってしまいます。時間をかければかけるほど損害のリスクも高まってしまうため、あまり時間をかけて調査は行わず、迅速かつ正確な調査内容をまとめ、なるべく早い段階で具体的な対応を行いましょう。
スピーディで綿密な調査を行いたい場合には、日頃から法務やコンプライアンス、監査などの各部門が連携していることが大切です。もしも自社で事実関係の調査を行うのに時間がかかってしまい賄えない場合には、必要に応じて弁護士などの外部専門家の力を借りてください。背任行為が発覚した時を想定して、発生時に慎重な対応をできるように準備をしておきましょう。
被害者と示談交渉をする
自社の従業員が加害者となった場合に、被害者との示談交渉も進めていきましょう。背任罪の場合には取引先や取引先の顧客などが被害者にあたるケースが多いです。被害者との示談が成立するかによって、刑事処分に至るのかに大きく影響します。例えば、すでに被害者との示談が成立している場合には、検察官の起訴・不起訴の判断にも当然影響します。仮に起訴された場合でも、示談が成立していれば判決の内容にも影響する可能性があります。
ただし、一般的に背任罪の被害額は個人では払えないほど多額になるケースも少なくありません。数千万、数億円という損害金が発生することもあるため、個人では弁済するのが難しいこともあります。金額によっては、一括での支払いではなく、減額した分割払いは可能かなど誠意を見せながら現実的な交渉をすすめてみましょう。被害者側としても、示談で終える方がメリットが多いと考えることもあり、現実的な支払い方法で示談に応じてもらえる可能性も残されています。
懲戒処分の可否・種類を検討する
自社の従業員の背任行為が発覚した場合には、事実調査や示談交渉を経て、懲戒処分の処罰を検討する必要があります。背任行為の内容とそれに対する懲戒処分等の判断を示すことで、自社に在籍している他の従業員に対して背任行為の重さを知ってもらい、今後の背任行為防止に繋げることが期待できます。懲戒処分には、いくつかの種類があります。
- 戒告、けん責・・・始末書を書かせるなど、従業員に対して厳重注意を与える処分
- 減給・・・従業員の賃金を減額する処分
- 出勤停止・・・一定期間、従業員の出勤停止処分
- 降格・・・従業員の今の役職から降格させる処分
- 諭旨解雇・・・従業員に対して退職を勧告する処分
- 懲戒解雇・・・企業が従業員との労働契約を解除し、強制的に労働者を退職させる処分
懲戒処分の減給に関しては、労働基準法91条によって「減給1回の額が平均賃金の1日分の半額以下、かつ総額が1賃金支払期における賃金の10分の1以下」と定められています。出勤停止に関しては、定められた出勤停止期間中の賃金を支給しません。降格に関しても、役職手当などが不支給となります。諭旨解雇は、従業員に退職を勧告する処分ですが、万が一、勧告に応じない場合は、強制的な形で懲戒解雇が行われる傾向にあります。
背任行為が発覚した場合には懲戒処分を検討しますが、自社に懲戒権があるかといって濫用しないように配慮と注意が必要です。大半の背任行為は企業に重大な損害をもたらす重罪と認められるため、懲戒解雇などの重い処分であっても妥当と認められることが多いです。ただし、不当と感じられる重い処分は、従業員とのトラブルや周りの社員からの不信感に繋がるリスクもあるため注意が必要です。将来的に予期せぬトラブルを避けるためにも、内容に相当する処分を行い、懲戒解雇と判断する際には慎重に対応しましょう。気をつけたいポイントとしては、従業員が犯した背任行為に至る経緯や性質、内容を照らし合わせるといいでしょう。正当と判断できず社会通念上相当と認められない懲戒処分は、労働契約法15条によって、客観的に合理的な理由を欠き、懲戒権の濫用に当たり無効となることがある点も覚えておいてください。
刑事告訴を検討する
自社の従業員による背任行為によって、企業は被害者となります。そのため、刑事訴訟法230条に基づき背任行為による被害内容によっては、従業員を刑事告訴することも可能です。従業員を刑事告訴した場合には、捜査機関によって捜査の義務が生じ、背任行為者である従業員が訴追されることもあるでしょう。さらに、刑事告訴した場合には社内をはじめ社外に対しても今後の背任防止を訴える強いメッセージとなる効果があります。
背任行為をきっかけに、コンプライアンスを今まで以上に徹底し、背任の撲滅を目指していくのもいいでしょう。刑事告訴を行うことで背任行為者に対して毅然と対応していくという選択肢もあります。
身柄の解放に向けた刑事弁護
自社の従業員による背任行為によって、従業員が逮捕されてしまった場合は、できる限り早く身柄を解放するために対処していくことが求められます。企業だけではどうにもならないことも多いため、専門である弁護士に依頼し、的確な刑事弁護を受けるのがいいでしょう。
背任行為の対処法に関しても、企業が契約している弁護士がいる場合は、早めに相談してください。逮捕という形を未然に回避できる方法を助言してもらえる可能性があります。さらに、企業ではなく弁護士が代理人として被害者との間に立つことで、冷静に客観的な対応や被害者との連絡なども円滑に進め、示談という形に落ち着けられるかもしれません。悩み続けているうちに企業にとって不利益なことだけが続いてしまうので、早めに相談を行ってください。
まとめ
今回は従業員に背任行為をされた時の対処法と、慰謝料請求について詳しく解説してきました。結論を申し上げますと、慰謝料請求を行うためには、従業員の現在の状況を維持した(職場、生活環境など)状態で、「示談交渉」を行うことが一番良いということになります。刑事告訴や社会的制裁を与える方法はいくらでもありますが、当の従業員に返済能力がなければ、どうすることも出来ません。そのため、あえて解雇はせず、そのまま継続して働かせるなどの対応を取るのが得策かも知れません。
この記事の著者:探偵社PIO 人事/労務信用調査担当 K.A
社員の不正、登用人事でのバックグラウンド調査や採用調査など人事労務に関連する調査を長年行う。
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。