横領は刑事事件?従業員が横領罪で逮捕された場合の対処法
社内の横領は刑事事件になるのか、逮捕者が出た場合には、会社としてどのような対策をするべきなのか、などについて疑問に思ってはいませんか?この記事では、横領で従業員が逮捕となったケースについて解説します。
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目次
横領罪は刑事事件なのか
横領罪は刑法252条〜254条に該当する犯罪です。捜査機関が横領を把握すると、刑事事件となり捜査が開始されます。
横領罪の種類
横領罪には単純横領罪や業務上横領罪などの類型があり、それぞれに罪状や法定刑が異なります。
単純横領罪
単純横領罪(刑法第252条第1項)は、他人から預かっているもの、借りているものなどを自分のものとして利用した場合や、売却した場合などが該当する罪で、法定刑は「5年以下の懲役」です。単純横領罪は対象が「物」であることが特徴で、他人の所有物を委託されて占有している際に、所有者でなければできないような行為をした場合に成立します。
遺失物等横領罪
遺失物等横領罪(刑法第254条)は、他人の落とし物や拾ったものなど、所有者のもとから離れた物を自分のものとした場合に該当する罪です。拾ったスマホや財布を売却した場合などに適用されます。法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」と、他の横領罪に比べて軽いことが特徴です。
業務上横領罪
業務上横領罪(刑法第253条)は、企業やなどが所有する物を業務上委託されて取り扱っている際に、自分のものとして利用した場合に成立する罪です。主に職場や企業などで限定的に与えられている権限を超えて、企業の所有物を私物化し、売却などをした場合に該当します。
単純横領罪に比べて被害額が大きくなりやすく、社会的影響も大きいため、法定刑は「10年以下の懲役」と重くなっています。
横領の刑事責任を追及するには
横領の刑事責任を追及し、処罰を望む場合は、告訴状を提出します。
通常、社内で発生する横領は、出入金の管理者である経理担当者などによるケースが多く、隠蔽されやすい特徴があります。外部からは分かりにくいこともあり、捜査機関が独自に横領の情報を得て捜査を開始するケースは少なく、企業側が被害届や告訴状を出すことで刑事事件の捜査が開始されるケースが一般的です。
被害届と告訴状の違い
被害届と告訴状は、どちらも横領の被害を警察へ申告するものですが、被害届には処罰を求めるという意味が含まれていないことが特徴です。そのため刑事責任を追及したい場合は、被害届ではなく、告訴状によって横領した人物の処罰を求める意思表示をする必要があります。
刑事責任は損害賠償が含まれない
横領罪に対して処罰を求める場合は、刑事事件として告訴しますが、刑事罰には損害賠償は含まれていません。横領の損害賠償請求をする場合は、民法上の手続きが必要になります。
民法上の横領は、不法行為(民法709条)に当たる罪です。被害者には横領に対する損害賠償請求権があるため、この権利によって損害賠償請求を行います。
損害賠償請求をする場合は、時効期間に注意する必要があります。民法上の横領は、被害者が「損害及び加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年間行使しないとき」に時効となります(民法724条)。刑事罰だけでなく損害賠償も望む場合は、時効期間内に民事での手続が必要です。
横領の発覚から逮捕までの流れ
社内での横領の発覚から、逮捕までの流れを解説します。横領問題の解決には、容疑のある本人への追及や逮捕という直接的な行動を取る前に、裁判で使用できる客観的な証拠を揃える必要があり、初期対応での詳細な調査がポイントです。
横領が発覚した際の初期対応
社内で横領が発覚した場合には、初期対応として事実確認の調査を開始します。誰が横領をしたのか、いつ横領があったのか、被害金額がいくらだったのかを明確にすることが重要です。調査方法は、横領の疑いがある人物の役職や業務内容によって変わります。
パソコンの調査
横領を疑われる人物が業務で使用したパソコンを調査します。メールや閲覧履歴、パソコン内に残っているデータを確認し、証拠を集めます。削除されたデータを復旧して調査するフォレンジック調査なども活用することが可能です。フォレンジック調査では、横領した人物がパソコンを初期化した場合や、メールやファイルなどを削除した場合でも、データの復旧が可能です。フォレンジック調査で得られた証拠は、裁判でも使用できる証拠となります。
帳簿類の調査
経理担当者の横領であれば、取り扱う帳簿や伝票、領収書、商品の在庫数などに不自然な点がないか実際の取引と照らし合わせて確認し、着服の証拠を探します。
POSレジデータの調査
レジ担当者の横領では、POSレジデータの取消処理や中止処理を中心に調べます。疑われる人物の出勤日や、商品の在庫数と照らし合わせて過不足などの記録を保存し、客観的な証拠を揃えることが重要です。
防犯カメラ
防犯カメラの映像は、決定的な証拠とされる傾向がありますが、固定カメラの映像だけでは裁判で証拠として認められないケースがあります。カメラの前で持ち出した金銭は移動させるためだった、戻すことを忘れていた、などの可能性があるためです。横領の場合、証拠は防犯カメラの映像だけに頼らず、当日の過不足金や取引と在庫数の違いなど、複数の証拠を準備することが重要です。
聞き取り調査
取引先や社内の聞き取り調査は、調査の最終段階で行います。聞き取りによって、横領を疑われている人物が調査に気づき、証拠隠滅や逃亡する可能性があるためです。社内の調査がすべて終了した後に、必要に応じて聞き取りを実施します。
本人への聞き取り
証拠の収集が完了した後、本人へ証拠を提示しながら聞き取りを行います。本人の証言を得た後、刑事事件として告発する場合、事件がニュースとなり会社のイメージダウンに繋がる可能性があるため、慎重な判断が必要です。十分な反省があり、被害額の弁償ができるのであれば、示談に応じることも選択肢の一つとなります。
告訴状の提出
横領は会社の利益を奪い、社会的な信頼や会社のイメージを損ないます。横領をした人物に厳しい処罰を望む場合は、警察署に証拠を貼付し告訴状の提出が可能です。示談していなければ、本人が反省し被害金額をすべて返金しても、業務上横領罪が成立しているため告訴できます。
横領罪で従業員が逮捕された際の対処法
警察に告訴状を提出し受理されると捜査が開始されます。横領した従業員が逃亡する可能性や証拠を隠滅するおそれがあると警察が判断した場合、逮捕となる傾向です。警察が逮捕に向かう際には、裁判所に逮捕状を申請します。裁判所から逮捕状が発付されると、警察は加害者を逮捕することが可能になります。
逮捕後の流れ
逮捕された本人は警察で取調べを受け、続いて検察での取り調べがあり、起訴不起訴は検察官に寄って決定されます。検察官によって公訴提起されると刑事裁判が決定します。
この際、十分な証拠がないと判断されると「嫌疑不十分」で不起訴となります。一度不起訴となると再度同じ事件で起訴することは困難なため、不起訴のリスクを減らすためにも証拠の準備が重要です。
逮捕がニュースになった場合の対策
横領が原因であっても社内から逮捕者が出たという事は、会社にとって社会的な信頼を失いかねない出来事です。メディアの取材やニュースになるケースも考えられるため、会社側の迅速な対応が必要になります。
内部通知
横領と逮捕に関する内部通知を行い、関連する部署や従業員に事態を報告します。この際、正確な情報と機密保持を確保することが重要です。
広報によるメディア対応
メディア対応は事前に社内でマニュアルを作成し、取材があった場合の対応で不備がないように準備しておくことが大切です。準備ができていない事で取材に応じられない場合、何か取材に応じられない理由があるのではないか、などマイナスイメージの増大に繋がる可能性があります。メディアの取材依頼には、迅速で正確な情報を伝えることに注力します。マイナスイメージとなるニュースでは、企業の誠実な姿勢を示し、プラスイメージに転換する努力が重要です。
自社メディアでの情報発信
現代はSNSなどの普及によって、噂が事実かのように広まるケースもあります。そのため噂よりも迅速に正しい情報を発信することが重要です。企業としての立場や見解を誠実に発信することで、憶測でのマイナスイメージが広まる事を防止します。
逮捕者の処遇
横領により犯人が逮捕された時点では、まだ自社の社員や役員として在籍している状態になっていることが多く、逮捕後の処遇を検討する必要があります。
懲戒処分
就業規則に、横領が該当する懲戒処分項目が規定されている場合に懲戒処分が可能です。そのため就業規則には、横領があった場合の規定を設けておくことも重要です。
役員の辞任
役員の場合は辞任を求めることになります。警察に勾留されている間は連絡が取れないため、後日辞任を求めるか、株主総会での決議で解任することも可能です。
休職扱いとする
逮捕後は休職扱いとし、処分を保留する方法です。横領の内容や社内状況に応じて対応します。
損害賠償請求
被害額の返金を望む場合は、民事による損害賠償請求(返還請求)の準備や手続きを進めます。
再発防止
横領は調査段階から、横領の再発防止に向けた対策を取る必要があります。横領が可能な環境があることは、再発の温床となるためです。
職務を分割する
経理や財務関連の職務を分割し、一人の従業員が取引の全過程を担当することがないようチェック体制を整えます。
監査の定期化
外部または内部の監査人による定期的な監査を実施し、財務報告の透明性を保つことで、横領の抑制や早期の対策が可能です。
従業員教育
従業員教育では、コンプライアンスなどの知識を学ぶ機会を提供し、社内での倫理規範を明確にすることが可能になります。
業務上横領で逮捕された人が釈放された実例
業務上横領で逮捕されたものの、示談交渉によって釈放、執行猶予で解決した人の例をご紹介します。
店舗支店長を務める40代男性の業務上横領
上司、部下からの信頼も厚い40代男性Aさんは、支店長を5年勤めており、店舗の金銭管理を行なっていました。ある日、大金が必要になり、金庫から無断でお金を抜き取り使用しました。
後日、金庫に抜き取った金額を戻しましたが、その後も繰り返し現金を抜き取るようになりました。その結果、金庫から引き出したお金は数年で500万円以上に上り、不審に思った会社側が調査したところ、Aさんの横領が発覚し、会社が被害届を出したことによって逮捕となりました。
会社側はAさんの謝罪や賠償責任を受け取らず、刑事による法定刑を望んでいましたが、Aさんが謝罪と損害賠償責任を取ることを強く伝えた結果、会社側はそれに応じ、刑事ではなく民事として解決することに同意しました。
その後Aさんは釈放され、損害賠償責任を果たすという条件で示談が成立しました。
この例では、刑事事件として進んでいた問題が、加害者の反省によって解決の方向に進んだことがポイントと言えます。
まとめ
今回は、従業員が横領で逮捕された場合の対策について解説しました。業務上の横領は、社内の経理担当者などによるケースが多く、隠蔽工作も巧妙な傾向があります。そのため証拠を集めることが困難で、調査には相応の時間も必要です。
また、裁判に必要な証拠を十分に集めることができない場合、嫌疑不十分とされ不起訴になる可能性があります。一度不起訴となると逮捕者は釈放され、再度起訴することは困難になるため、処罰することは実質不可能に近い状態になります。
刑事告訴を検討している場合には、不起訴のリスクを下げることがポイントです。検察官や裁判官が認める価値のある証拠を集めることが重要です。
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この記事の著者:探偵社PIO 人事/労務信用調査担当 K.A
社員の不正、登用人事でのバックグラウンド調査や採用調査など人事労務に関連する調査を長年行う。
関連タグ: 横領
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。