実際にあった背任罪の事例とは?特別背任罪や横領罪との違いについても解説します

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背任罪の事例や類似する特別背任罪や横領罪との違い解説

実際にあった背任罪の事例について、ネットで情報を調べていませんか?会社や個人など他人の財産に関わる事務処理をする業務を行う人物が、遂行しなければいけない業務に背いて、会社や個人に対して損害を与えた場合に成立するのが背任罪です。会社にとっていい効果をもたらすためと取った行動が会社や個人にとって大きな損害を与えてしまい、謝って済む話ではないほどに膨れ上がり、この刑に罰せられる可能性があります。事前に背任罪について理解したり事例や要件を知っておくことで、自分が加害者にならないように未然に防ぐことも期待できるでしょう。そこで今回は、実際にあった背任罪の事例と類似した犯罪である特別背任罪や横領罪との違いについても解説します。ぜひ参考の一つにしてみてください。

背任罪とは

背任罪は特別背任や横領と混同されやすい罪なので、実際に背任罪となった事例を見ながら、どのようなケースだと背任として処罰されるか見ていきます。

実例①不正な融資

お金が絡む事例で多いのが銀行の不正です。担保が不足していると分かっているのに営業成績を上げるために多額の融資をしていた実例があります。明らかに与えられた任務に背く行為です。ルールに則っていれば審査に通らないはずなのに、審査に通ってしまったために会社に損害を与えてしまいました。

これは規模が小さければ被害も最小限に留めることができますが、銀行が倒産するほど巨額の融資をした結果、返済が焦げ付いてしまいどうすることもできずに倒産に追い込まれてしまった事例もあります。

規模が大きくなればなるほど従業員個人で行った行為という範囲を超えて、会社の経営陣も深く関わっていることもあり、ニュースで話題になることもありますが、不適切融資や水増しで代金を支払った事例で無罪になったケースもあり、判決で有罪にならないこともあります。もし上司の指示に従って会社に損害を与えるようなことをしたとしても背任罪は成立します。

実例②公務員による背任行為

お役所仕事という言葉がありますが、ずさんな貸し付けで県に損害を与えた県職員の事例もあります。県独自の融資を担当する部署が希望する相手に気付いていながらも、融資をして良いか調査をしないまま多額の金銭を貸し付けた結果、県に大きな損害を与えてしまった事例があります。

裁判では有罪となり執行猶予なしの実刑となっています。このように民間企業でなくても公務員の立場でも会計や経理などを担当している部署で背任罪が適用されるような事例もあります。

さらに、副知事ら数人が不正な貸付けを実行していた実例もあります。普通地方公共団体に属している副知事ら3名が、創業間もない協業組合に対して10億円以上の貸付けを実行していました。該当する協業組合の代表者らは、元々提出している事業計画に必要な自己資金を調達することなく、運転資金が不足していました。さらに、既に県から総額14億円余りの貸付けも受けており、様々な取り組みをするものの組合の業績は悪化していく一方で回復の見込みはありませんでした。貸付けにかかる予算に関して、副知事ら3名は県議会の議決を経ずに、10億円以上の貸付けを実行しました。多額な金額を償還できる可能性が極めて難しいことを認識していながらも、14億円とは別に、新しく貸付けを実行した行為は背任罪に当たります。最終的に副知事ら3名らは背任罪に問われ、懲役2年2月、懲役1年8月、懲役1年6月の実刑をそれぞれ言い渡されました。

実例③不正な情報公開

パチンコ店店長だった男性が、一部の客や友人男性に対して、公開してはいけない情報を流していた実例です。パチンコ店にとって、当たるスロットの情報や当たりやすく手を加えることは店内従業員のみが知る「機密情報」であり、公開は禁じられています。しかし、パチンコ店店長だった男性はスロット台の当たる確率を操作し、さらに「大当たり」する方法を公開して数十万円相当の損害を与えました。店舗の責任者という立場でありながら、運営の要である情報を扱った行為は、背任行為にあたります。パチンコ店を運営する企業は、男性を警察に引き渡しています。

実例④食品加工会社役員による架空発注

食品加工会社に勤める役員が、現実には請け負っていない架空発注を繰り返し、合計5年間で500万円以上のお金を騙し取っていた実例です。この背任罪にあたる行為が実現してしまった背景として、発注や経理を男性役員一人で担当していたことが挙げられます。5年という長い間、架空の発注に気づくことができず、架空発注の疑いをかけた取引先からの指摘よって事実が発覚しました。食品加工会社は、会社に損害を与えたとして男性役員に対して損害賠償請求を求めましたが、男性が拒否したこともあり、最終的に警察に引き渡しています。

実例⑤自動車販売会社での同立替金

自動車販売会社に勤める営業本部グループ長の男性は、同社が販売している新車の新規登録及びこれに付随する自動車重量税印紙購入等の業務を1人で統括していました。営業本部グループ長の男性は、業務で必要となる自動車重量税印紙を購入すべき任務を業務を遂行していました。一般社団法人の取扱窓口に自社名義の自動車重量税印紙購入申込書を提出すると、別の法人による立替払によって自動車重量税印紙を購入することができます。自社から一般社団法人に対して、後日同立替金が支払われていました。この実例では、多額の自己の利益を図っていることが証明されており、額面金額合計でいうと1億490万円の自動車重量税印紙を購入し、法人に立替金合計1億490万円を支払わせ、勤めていた自動車販売会社に財産上の大きな損害を加えています。男性は警察に引き渡され、結果的に背任罪の実刑として懲役3年を言い渡されています。

実例⑥実刑にならないケース

背任行為に匹敵したとしても、実刑にならないケースも実例として紹介していきます。特定の顧客からの申し出により、自社の営業職社員Aが顧客からAの個人名義の銀行口座にお金を入金させている事実が明らかになりました。事実調査の結果入金されていたのは手数料だったこともあり、示談交渉の結果、営業職社員Aが顧客から受け取った手数料を全額分割で支払う形で示談が成立しました。近年、自社の職員による横領罪や背任罪にあたる行為が増加しており、示談成立ということで実刑には至っていないケースとなります。今回は顧客からの申し出もあり、背任行為に気付くことができましたが、巧妙な手口で発覚しないこともあります。不審な行動が続く場合には、事実調査を行うことが重要です。

背任罪の構成要件

背任罪になるための構成条件があります。この条件に当てはめて罪が成立するか判断します。構成要件は以下の3つのポイントが満たされていることが重要です。

  • 他人のために事務処理を行っていること
  • 任務に背いていること
  • 財産上の損害を与えていること

それぞれについて、簡単に確認していきましょう。

他人のために事務を行っていること

必ず他人のために事務処理をしていることが大前提となります。ここでいう他人は、「会社」などの組織を指しており、雇用されて会社の事務の業務を行っているなどの条件が求められます。事務といっても、「財産上に関わる事務」というのがポイントで、会社のために財産の経理や管理(金品など)、権利の手続きなどを行なっている事が条件になります。事務作業をしている人が自分や他人の利益を意図的に図る行為をしたり、それとは反対に損害を与える目的で本来の事務業務とはかけ離れた行為をしたら背任罪となります。

任務に背いていること

会社などの組織に属している場合、組織で決められた業務を遂行しています。背任行為の絶対条件はこの決められた任務、信任に背くことが前提となります。会社や組織から信頼されて任せられている業務に背き、裏切る行為といえるでしょう。

財産上の損害を与えていること

最後の条件は、会社や組織の財産上の損害にあたることが前提となります。例えば、会社組織内のお金を勝手に使ったり、売却することで「自分のため、あるいは他人のための利益をえて、企業に損害を与えます。ただし、会社の利益やメリットになることを目的に、独断で行なった財産上の損害については背任行為が認められず、背任罪に問われない場合もあります。

特別背任罪と横領罪

背任罪と似ているので混同されることが多いのが特別背任罪と横領罪です。どのような違いがあるか事例を踏まえて解説していきます。

特別背任罪とは

業務に背く行為が罪に問われる点では、ほぼ背任罪と変わりませんが、会社などの組織の役員や取締役など、権限を与えられている上層部が利益を図る目的、反対に損害を加える目的で任務に背く行為の場合には特別背任罪が適用されます。特別背任罪の量刑を決める要素には、以下のような要素が挙げられます。

  • 会社に対する任務違背行為を行った期間や回数
  • 最終的に会社に与えた損害額
  • 背任行為の計画性、巧妙さ
  • 自己の利益を得るためなどの動機
  • 会社の社会的立場
  • 今まで会社どのくらい貢献してきたか

以上、挙げている要素はほんの一部になりますが、事実調査を行い整理したうえで、比較的重い量刑が決定されるとされています。特別背任罪は背任罪の特別法ということもあり、権限を与えられている人による背任行為は会社に与える被害だけでなく、債権者や株主への損害が大きくなるため、普通の背任罪より重い処罰が下されることが多いです。幹部や経営陣が絡んでいるということもあり、巨額の不正融資や不正取引、さらには故意の不良債権の貸付、反社など不正をしている会社との取引や粉飾決済などが挙げられます。

取引の規模が大きくなれば会社の役員であっても必ず承認を得る必要があります。しかし勝手な判断で無理だと分かっていながら融資をした結果損害を被ってしまったら特別背任罪が適用されます。

これだけでなく本来であれば赤字決算なのに幹部の指示で黒字決算であるかのように見せかける粉飾決算も経営陣が逮捕される可能性が高いです。このような不正が発生しないために公認会計士などが常に監査などをして会計のチェックをしていますが、その公認会計士も絡んで不正を働く悪質な例もあります。さらに、巧妙な手口で実行している傾向にあるため、犯罪を共同で行なう共同正犯として2人以上の人が主体的に犯罪を行なって背任行為をしていることが多いです。例え、会社内で幹部や役員でなかったとしても、特別背任罪に問われることになる点は覚えておきましょう。

横領罪とは

横領罪とは、自己の占有する他人の物を管理を委託されていたにもかかわらず、そのまま不法に領得する行為が該当します。雇用されている側の人間が私欲のために会社などから預かったお金などを勝手に消費してしまうケースなどが、実例として多いといえます。例として多いのが会社や団体など経理事務を担当していた人がこっそりと様々な方法で金品を横領する手口や公務所から保管や管理を任された物を勝手に横領してしまったケースなどが挙げられます。横領罪は背任罪よりもニュースになることが多く、借金の返済やギャンブルに費やしてしまったり、女性の場合だとブランド品を購入したり海外旅行などをしていたケースなども該当します。背任罪も横領罪も、任された任務に背く行為という点では共通していますが、横領罪は自分勝手な行為に限定されるところが背任罪との違いになります。また、気になる実刑ですが、背任罪は5年以下の懲役。横領罪の法定刑も5年以下の懲役となります。しかし、業務中に横領罪が成立している場合には法定刑が10年以下の懲役に加重される傾向にあるので、ここにも違いが生まれています。

背任罪が発覚したら

背任罪は組織的な行為に及んでいることも多く、発覚するまで時間がかかるケースもあります。不正融資や粉飾決済などが行われている事実を会社がしったら必ず事実調査が行われます。罪の規模が小さければ従業員と示談交渉をすることもありますが、もし示談にならない場合は会社側で刑事告訴をしたり、被害届を出して対応をします。深刻な状況であれば示談交渉をせずにそのまま刑事告訴をし、早い段階で逮捕される場合もあります。

事実調査と処分の可否

背任行為が発覚した場合には、懲戒処分や刑事告訴など今後の対応や処分を適切に行うために事実関係を迅速かつ正確に調査します。背任行為に関係する者を対象にヒアリングを実施したり、関連する書類なども収集し整理していきます。自社で早期調査ができない場合には、探偵や弁護士などの外部に依頼し、スピーディーに調査を行います。

調査の結果、背任行為の事実が確認された場合には、さらなる損害を防ぐためにただちに背任行為をやめさせる必要があります。その後、減給や出勤停止、懲戒解雇などの懲戒処分の処罰を検討していきます。背任行為の内容を照らし合わせ、該当する懲戒処分等の判断を示していきます。懲戒処分等の判断を示すことで、企業に在籍している従業員に向けて、背任行為の重さを知ってもらうメッセージとなり、今後の背任行為防止に繋げることが期待できるからです。

示談交渉をする

背任罪で逮捕されるケースもありますが、被害者側の理解があれば示談交渉をすることもできます。自分の犯した過ちを素直に認めて一括で弁済することができれば示談交渉をすることで起訴や逮捕されずに済みます。

もし一括弁済が難しければ分割払いが可能かどうか聞いてみましょう。もし自分自身で判断ができない場合は必ず弁護士に相談するようにしてください。そして弁護士に指示に従って対処することが求められます。

弁護士が仲介してくれれば代理人として被害者に連絡を入れて示談を進めてくれます。全てを一人で解決するのは難しい部分も多いので、トラブルが大きくなる前に弁護士に相談することが賢明です。

逮捕されたら

逮捕されたら48時間以内に検察に送検されます。その後勾留されて取り調べを受けます。それだけでなく逃亡や証拠隠滅を防ぐために勾留が行われます。この勾留期間内に起訴されるか不起訴になるかが決定します。もし起訴されたら刑事裁判が行われます。そこで有罪か無罪かの判決がくだされます。

もしも、背任行為が認められ、有罪判決だった場合には5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金となります。背任罪には時効期間が5年あり、それ以降は民事上の賠償請求等で対応する形となります。特別背任罪の法定刑は企業の中枢で重要な役割を担い、企業への損害も大きくなるため背任罪の内容よりかなり重い刑となる傾向にあります。10年以下の懲役または1000万円以下の罰金あるいはその両方とされています。

未遂の場合には処罰対象になるのか

事実確認を行う上で、背任罪や特別背任罪が未遂で終わってしまったケースもあるでしょう。このケースは、例え背任罪や特別背任罪のいずれの条件が成立しなくとも処罰の対象となり得ます。結果的に未遂で終わり、財産上の損害がなかったとしても、刑法250条にあたる「背任未遂罪」に該当します。企業の財産状態を整理し、未遂であったとしても、企業の財産の価値が減少、あるいは本来増加すべき価値が増加しなかった場合に成立します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は実際にあった背任罪の事例と類似した犯罪である特別背任罪や横領罪との違いについても解説してきました。実例でも紹介してきたように、意図的に背任行為をして損害を与えてしまった場合、刑事事件の被疑者として逮捕されるだけでなく起訴されて刑務所に服役したり、会社から多額の損害賠償を請求される可能性もあります。自分がやった過ちを素直に認めて謝罪をして、しっかり誠意を見せることで示談交渉に持ち込むことができる可能性があります。

専門家監修

この記事の著者:探偵社PIO 人事/労務信用調査担当 K.A

社員の不正、登用人事でのバックグラウンド調査や採用調査など人事労務に関連する調査を長年行う。

株式会社ピ・アイ・オ

探偵社PIO編集部監修

本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

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