背任罪と特別背任罪の違いとは?企業犯罪における背任行為の特徴を紹介します
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目次
背任罪と特別背任罪の違いや背任行為の特徴を紹介します
ニュースを見ている時に「背任罪」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。「背任罪」は”不正”というイメージが強いですが、企業犯罪における背任行為の特徴について理解している人は少ないのではないでしょうか。また、企業犯罪である背任罪において、特別背任罪という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。「背任罪」「特別背任罪」は犯罪としての意味合いは大きく異なります。そこで今回は、企業犯罪における背任行為の特徴や背任罪と特別背任罪の概要、それぞれの違いについて解説します。背任罪が気になる人は、ぜひ参考にしてください。
背任罪とは
背任罪は刑法247条に規定されており、背任罪が成立する条件は4つあります。
- 会社の為に該当の事務処理する者
- 自分や第三者への利益目的であり会社に損害を与える目的
- 当該任務に反する行為
- 会社に財務上の損害を与えた時
それぞれについて詳しく解説していきます。
会社の為に該当の事務処理する者
背任罪が成立するには、まず前提として他の個人や法人など他人の為になんらかの事務処理をしている必要があります。また、会社の設立や運営、仕組み、組織などについて定められた会社法に基づき、会社の従業員が業務をしていることが該当します。事務というと単純なデータ入力のみなどをイメージしてしまいますが、会社の従業員は事務作業をしている従業員であれば誰でもいいわけではありません。ここで指す事務の意味は、会社の財務や財産的なものに関わる事務処理です。さらに他人の事務というのがポイントになるため、プライベートや自己の事務については、背任罪は成立しません。この場合は、一般的に民事上の債務不履行責任を負う形となります。他人に該当するのは会社などの法人や国及び地方公共団体などとなり、他人からの信任や委託に基づいて、任された事務を処理することなどが含まれます。例えば、会社の財務に関わる従業員である経理担当者や会社から融資判断を任されている銀行員などが該当します。
自分や第三者への利益目的であり会社に損害を与える目的
背任罪が成立する条件として、その行為の目的も重要な要素となります。自分や第三者の利益目的であり、会社に損害を与えるのが目的でなければなりません。利益は金銭的なものだけでなく、立場や信用など社会的身分も含まれます。結果的に背任行為になったとしても、会社の利益につながると信じて行動した場合には背任罪には該当しません。会社に損害を与えず、会社の利益のための行動であれば背任罪には問われないということです。ここで指す利益に関しては、会社の財産はもちろんのこと、会社の社会的信用信頼や面目を維持するものなども含まれることを覚えておきましょう。さらに、自己・第三者の利益と本人の利益をいずれも目的としたケースもあります。この場合にはどちらが主な目的であったかによって、図利加害目的の有無が判断されるとされています。なお、本人の利益を図る目的もあった場合には、どちらが重たる目的だったかによって背任罪に該当するかが判断されます。
当該任務に反する行為
任務に背く行為にはさまざまなものがあります。事務を任された以上、任された者として法的に期待される行いをするべきですが、反する行為が認められた場合には、状況や内容によって判断されることになります。会社の任務やルールに従わず、独断での行為が会社にとって不利益につながる場合に該当します。任務違背行為とも呼ばれますが、具体例として銀行員が貸し付けを行なう際、会社での審査に通らない人や返済見込みがない人に対して、私的な理由で融資を行なうケースなどがあげられます。その任務に背く行為かどうかは、信任や委託されている事務の内容、その事務を処理している者の地位や権限、背任行為を行ったタイミングや状況などを照らし合わせます。事務の処理者として期待される行為の範囲を逸脱していたかどうかが重要となります。
会社に財務上の損害を与えた時
会社に財務上の損害が発生した場合に成立することになります。仮に任務に背いたとしても、損害が発生しなければ背任罪とはなりません。損害に含まれる意味合いは幅広く、既に有している財産が減少する「積極的損害」、本来であれば得られるはずの利益が得られない「消極的損害」の2つがあります。不良貸付などは、銀行から貸付先に返還を求める法律上の権利はありますが、現実的に回収が行えないため、経済的には権利自体に価値がなくは無価値であり、財務上の損害を与えたと認められるでしょう。
特別背任罪とは
「特別背任罪」の基本的な意味合いは「背任罪」とほぼ同じですが、成立する人が大きく異なります。成立する人は代表取締役社長、取締役や監査役などの特に権限を与えられている人物にのみ適用されます。特別背任罪は背任罪の特別法であり、通常よりも重い刑罰を科すものです。会社内で一定の権限を与えられている人は、業務執行に関する権限が強いことがほとんどです。これらの人が背任行為を行なった場合には会社に与える被害だけでなく、債権者や株主への損害が大きくなるので、重い刑罰を科されることになります。会社内で一定以上の身分者は一般社員よりも組織運営で重要な役割を果たしており、一般社員よりも重い責任があるはずという考え方があります。通常よりも重い責任が存在するので、信任関係を損なった際には処罰も重くするべきだといえるでしょう。
共同正犯についても協議されることが多い犯罪です。共同正犯は犯罪を共同で行なうことであり、2人以上の人が主体的に犯罪を行なうと成立します。共同正犯が成立することで、どちらも主犯扱いとなり、従犯による減刑は受けられません。では、特別背任罪の場合どうなるのか気になりますよね。特別背任罪は「一定の権限を持っている人」に限定されていますが、会社内で身分を持っている人と持っていない人が共同正犯の場合、身分を持っていない人でも特別背任罪に問われることになります。
特別背任罪の捜査方法は通常の犯罪とは異なります。傷害や窃盗などの刑事事件では警察が主体となって捜査をすることがほとんどですが、特別背任罪は検察庁特捜部が主体となって捜査することになります。特別背任罪は数十億円規模の巨額資金が動く犯罪になることもあり、専門性を必要とする捜査になることが多いです。検察庁特捜部はどこにでもあるわけではなく、東京地検と大阪地検、名古屋地検の3か所に設置されている専門機関です。
特別背任罪の量刑を決める要素には、以下のような要素が挙げられます。
- 期間、回数等の行為(会社に対する任務違背行為を行ったか)
- 会社に与えた損害額
- 計画性、巧妙さ
- 動機(自己の利益を得るためかどうか)
- 会社の社会的立場(銀行の役員等が任務違背行為をすると、社会的影響が大きい)
- 任務違背行為をした者が、今まで会社どのくらい貢献してきたか
これらの要素を整理し、重い量刑が決定されるとされています。
未遂でも処罰の対象になるのかどうか
ちなみに、背任罪や特別背任罪を行おうとしたものの未遂で終わったケースもあるでしょう。この場合には、例え背任罪特別背任罪いずれに関しても条件が成立しなくとも処罰対象となります。財産上の損害がなかったとしても、刑法250条にあたる「背任未遂罪」に該当するので覚えておきましょう。客観的に、経済的な自立や本人の財産状態を評価し、未遂であったとしても、本人の財産の価値が減少してしまったり、本来増加すべき価値が増加しなかった場合が該当します。例えば、貸し付けた相手の経済的資力が乏しく、貸付けたタイミングから返済が見込まれないもしくは審査に通らないことを知っていながら貸付けたような場合には、財産の価値が減少し財産上の損害を加えた場合に当たるでしょう。
背任罪と特別背任罪の違い
背任罪と特別背任罪の内容を理解したところで、それぞれの違いについて知りたいですよね。それぞれの違いには3つのポイントがあります。
- 刑罰
- 時効
- 身分
それぞれについて、詳しく解説していきます。
刑罰
背任罪は5年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑となり、特別背任罪は10年以下の懲役刑または1000万円以下の罰金刑です。特別背任罪の刑罰の方が重いのは、業務に関する権限が強い人に適用される特別法だからといえるでしょう。
時効
背任罪の時効は5年ですが、該当行為をしたとしても5年経過している場合には逮捕や起訴されることはありません。特別背任罪の時効は7年ですが、該当行為をしたとしても7年経過している場合には逮捕や起訴されることはありません。
身分
背任罪が適用されるのは会社の財務に関わる一般社員であり、特別背任罪が適用されるのは取締役や監査役などの業務執行に関する権限が与えられている人になります。業務執行に関する権限が与えられている身分であれば背任行為による会社や債権者への被害が大きくなることで処罰が重く設定されています。
背任罪と類似した犯罪の違い
背任罪と類似した犯罪があり、違いについて説明できない人も多いでしょう。類似している犯罪には詐欺罪、横領罪、特別背任罪などが挙げられます。それぞれの犯罪との違いについて解説します。
背任罪と詐欺罪の違いとは
背任罪は会社の任務に背いて、個人、もしくは他人の利益を得るために会社に損害を与える行為に対し、詐欺罪は被害者を騙して財産上不法の利益を詐取する行為にあたります。人を欺いて財物を交付させた者にも詐欺罪は成立します。一番の違いは、背任罪は手段は問われておらず、任務違背行為をしたのかが重要となります。一方で、詐欺罪は人を欺く行為が対象になっています。ちなみに、背任罪は5年以下の懲役ですが、詐欺罪は10年以下の懲役となるため、刑罰の重さも異なります。
ただし、この二つの罪が重なることもあります。例えば、他人から事務を委託された者が、ある特定の人物を欺いて財物を交付させるようなケースです。この場合には、詐欺罪と背任罪の両方の構成要件が満たされており、昭和7年6月29日に判決した事例もあります。
背任罪と横領罪の違いとは
横領罪は、自己の占有する他人の物を管理等を委託された形でそのまま不法に領得する行為です。さらに自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた物を横領したケースも横領罪が成立することになっています。背任罪も横領罪も、任された任務に背く行為を処罰する財産犯という観点では共通しています。背任罪と横領罪の違いについてはさまざまな見解がありますが、横領罪は物の不法領得、その他の任務違背行為は背任罪と考えるのが見解として有力とされています。背任罪は5年以下の懲役ですが、横領罪の法定刑も5年以下の懲役です。ただし、業務上横領罪の場合には法定刑が10年以下の懲役に加重されるので、詳細内容も重要となります。
背任罪と横領罪についても、構成要件を満たすことがあります。例えば、他人から事務を委託された者が、管理を委託されたその人の所有物をそのまま不法に領得したり処分してしまったケースです。横領罪と背任罪の両方が該当した場合には、横領罪が成立することが多いです。
逮捕された後の流れ
背任行為が発覚した場合、まずは社内で事実調査が行われます。一般的には弁護士に連絡し、従業員に対して損害賠償請求が行われますが、事実を知った別の者が、警察に通報して公になってしまうこともあります。警察への通報によって逮捕されてしまった場合は、起訴され裁判を行うことになります。裁判には「正式裁判」と、法廷に出廷する必要がない「略式裁判」があり、罰金刑のみの求刑であれば略式裁判が採用されることもあります。
背任行為を行った者が逮捕されてしまった場合も弁護士にすぐに相談し、弁護を依頼します。もしも、背任罪や特別背任罪で逮捕されると、その後おおよそ20日程度の勾留が続く傾向にあります。背任行為を行った者が事実を認めている場合には、関係者に対するヒアリングや事実関係を確認できる書類などを、漏れなく徹底的に調査しましょう。とはいえ、調査に時間をかけるのは好ましくありません。背任行為が事実だった場合、自社に大きな損害を与えかねません。調査は迅速に済ませ、早い段階で具体的な対処法を検討していきましょう。最終的には、被害者との示談や被害弁償も必要になります。加えて、勾留期間中に被害者との間で示談成立や被害の弁償ができれば、不起訴で済む可能性もあります。何にせよ、逮捕されてしまった場合にはスピーディーな対応が求められます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は企業犯罪における背任行為の特徴や背任罪と特別背任罪の概要、それぞれの違いについて解説してきました。
背任罪と特別背任罪は身近で起こる犯罪ではありませんが、企業犯罪としてニュースで見ることもあるでしょう。背任罪は会社の財務に関わる一般社員による背任行為であり、自分や第三者への利益の為に会社が損害を与える目的だと認められた場合に適用されます。特別背任罪は背任罪と同様の内容になりますが、「刑罰」「時効」「身分」の3つのポイントで異なります。特別背任罪が重い処罰を科されるのは、適用される人物が業務執行に関する権限が与えられており、一般社員よりも重い責任を背負っているからです。業務執行に関する権限が与えられていることで、同様の背任行為を行なったとしても、会社や債権者に与える被害が大きくなることを想定しているといえます。今回は、背任罪と類似している犯罪との違いや、万が一背任行為を行った者が逮捕されてしまった時の流れについても紹介しました。この記事を通して、背任罪と特別背任罪の違いについて把握し、疑問に感じていたことが解消されていたら嬉しいです。
この記事の著者:探偵社PIO 人事/労務信用調査担当 K.A
社員の不正、登用人事でのバックグラウンド調査や採用調査など人事労務に関連する調査を長年行う。
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。