採用調査とは?目的別の手法と費用、おすすめサービスを解説
この記事では、採用活動におけるミスマッチを防ぎ、採用の質を高めるための「採用調査」について包括的に解説します。採用調査の基本的な定義から、なぜ現代の企業にとって不可欠なのか、その具体的なメリットを深掘りします。さらに、バックグラウンドチェックやリファレンスチェックといった類似サービスとの違いを明確にし、目的別に最適な調査手法と調査項目を整理します。実施にあたって遵守すべき法律や注意点、依頼から実施までの流れ、費用相場、そして信頼できるサービスの選び方まで、採用担当者が知りたい情報を網羅的に提供します。
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目次
採用調査とは?ミスマッチを防ぎ、採用精度を高めるための重要なプロセス
採用調査とは、採用候補者が提出した履歴書や職務経歴書の内容に虚偽がないか、また、企業が求める人物像と合致しているかなどを客観的な情報に基づいて確認するプロセスです。面接だけでは見抜くことが難しい候補者の経歴や人柄、潜在的なリスクを事前に把握することを主な目的とします。
この調査は単なる「粗探し」ではありません。企業と候補者双方にとって最適なマッチングを実現し、入社後の活躍と定着を促すための重要な手続きです。採用調査を適切に実施することで、候補者の自己PRの整合性を確認し、社会性やコミュニケーション能力といった側面から企業文化への適合性を見極めることができます。結果として、採用精度を高め、入社後の早期離職を防ぎ、企業と従業員双方にとってメリットのある関係性を構築することを目指します。
なぜ採用調査は必要なのか?企業が抱える課題と導入のメリット
多くの企業が、採用活動において「候補者の能力や人柄を面接だけで見極めるのは難しい」「経歴詐称によるトラブルを未然に防ぎたい」といった共通の課題を抱えています。特に、デジタル化が進み、個人の情報発信が容易になった現代では、表面的な情報だけでは候補者の真の姿を捉えきれないケースが増えています。
このような状況において、採用調査は企業が抱えるこれらの課題を解決するための有効な手段となります。客観的な情報に基づいた採用判断を支援し、ミスマッチのリスクを大幅に低減することが可能です。採用ミスマッチが企業経営にもたらす具体的なリスクを深掘りし、採用調査を導入することで企業が得られる多岐にわたるメリットについて詳しく解説していきます。
採用ミスマッチがもたらす経営リスク
採用ミスマッチは、企業経営に深刻な影響を与える可能性があります。まず、早期離職は直接的な金銭的損失に繋がります。採用にかかった広告費やエージェント費用、入社後の研修費、そしてミスマッチが原因で退職した従業員を補充するための再採用コストなど、一人の早期離職によって数十万円から数百万円もの費用が無駄になることも少なくありません。
金銭的なリスクに加えて、組織への悪影響も看過できません。期待された能力を発揮できない従業員や、社風に馴染めない従業員がいると、チーム全体の生産性が低下したり、他の従業員の士気を下げたりする原因となります。例えば、経歴を偽って入社した社員が期待された成果を出せず、担当プロジェクトが停滞したケースや、問題行動の兆候を見抜けなかった結果、他の社員が次々と辞めてしまい、既存の組織が疲弊してしまうといった事態も発生し得ます。
さらに深刻なのは、コンプライアンスやレピュテーション(企業の評判)に関わるリスクです。候補者の過去のトラブルや反社会的な関与を見過ごして採用してしまった場合、顧客情報の漏洩、ハラスメント、不正行為といった問題に発展する可能性があります。これにより、企業としての信用が失墜し、顧客離れや事業停止命令など、取り返しのつかないダメージを受けるリスクも秘めているのです。
採用調査を導入する5つのメリット
採用調査は、単に採用ミスマッチのリスクを回避するだけでなく、企業の採用活動そのものの質を高め、より積極的な効果をもたらすことができます。経歴詐称の抑止、コンプライアンスリスクの低減、公正な選考の実現、採用の質の向上、そして採用担当者の負担軽減といった多角的な観点から、採用調査がもたらす価値は非常に大きいと言えるでしょう。これから、これらの5つのメリットについて一つずつ詳しく解説していきます。
1. 経歴詐称や虚偽申告の防止
採用調査は、候補者が提出する履歴書や職務経歴書に記載された情報が事実であるかを客観的に検証することで、経歴詐称や虚偽申告を効果的に防止します。学歴、職歴、保有資格、前職での役職や実績、雇用期間などに虚偽がないかを確認するプロセスは、採用の判断材料となる情報の信頼性を大きく高めます。
例えば、前職での役職や在籍期間を詐称していた場合、入社後に期待されたパフォーマンスを発揮できないだけでなく、他の社員との間で軋轢を生む原因にもなりかねません。採用調査を行うことで、こうした虚偽の申告を未然に牽制する効果があるほか、万が一虚偽が発覚した場合には、採用の可否を判断するための重要な情報として活用できます。これにより、入社後のトラブルを減らし、信頼できる人材を確保することに繋がります。
2. コンプライアンス・レピュテーションリスクの低減
企業は、反社会的勢力との関わりや、従業員の過去の重大な犯罪歴・訴訟歴などが発覚した場合、企業イメージの失墜や事業活動への支障といった深刻なコンプライアンス・レピュテーションリスクに直面します。特に、企業の役員や経営に直結する重要なポジションの採用においては、個人の問題が企業全体の信用問題に直結する可能性が高く、事前確認の重要性は計り知れません。
採用調査では、これらのリスクを未然に把握し、低減することができます。例えば、SNS調査を通じて候補者の過去の不適切な言動、差別的な投稿、企業に対する誹謗中傷などを確認することで、将来的な「炎上」リスクや企業ブランドの毀損を防ぐ役割も果たせます。コンプライアンス意識の高い組織文化を維持し、企業の社会的信用を守る上で、採用調査は不可欠なツールとなります。
3. 客観的な情報に基づく公正な選考
面接では、面接官の主観や第一印象に左右されがちで、候補者の本当の能力や人柄を見極めることが難しい場合があります。採用調査は、このような主観的な選考プロセスに、第三者による客観的な事実情報を加えることで、採用選考の公平性と精度を飛躍的に向上させます。
客観的なデータに基づいて候補者の能力や実績を評価できるため、面接官が抱く個人的な偏見や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)を排除しやすくなります。全ての候補者に対して一貫した基準で調査を行うことで、採用プロセスの透明性が確保され、公平性が高まります。これは、企業としての信頼性向上に繋がるだけでなく、候補者にとっても、より公正な評価を受けられるというメリットがあります。
4. 採用の質向上と組織への定着率アップ
採用調査は、単なるリスク排除に留まらず、採用の質そのものを高め、結果的に社員の定着率向上にも繋がります。リファレンスチェックなどを通じて、候補者の実績やスキル、チーム内でのコミュニケーションスタイル、ストレス耐性といった「働きぶり」に関する具体的な情報を得ることで、自社の文化や求めるポジションとの適合性をより深く判断できるようになります。
これにより、単にスキルがあるだけでなく、企業のカルチャーフィットも考慮した採用が可能となり、入社後のミスマッチを大幅に減少させることができます。結果として、早期離職を防ぎ、社員が長期的に活躍できる環境作りに貢献します。質の高い人材の定着は、企業の持続的な成長に不可欠であり、採用調査はそのための重要な戦略的投資と言えるでしょう。
5. 採用担当者の心理的負担の軽減
「この候補者を採用して本当に大丈夫だろうか」という不安は、採用担当者が常に抱える大きな心理的プレッシャーです。特に、企業の将来を左右する重要なポジションの採用においては、その判断がもたらす責任は計り知れません。採用調査は、このような採用担当者の心理的負担を大きく軽減する役割を果たします。
客観的な調査結果という根拠に基づいて採用判断を下せることで、担当者は自信を持って決定を下せるようになります。また、万が一入社後にミスマッチや問題が発生した場合でも、適切な採用調査プロセスを踏んでいたという事実が、担当者個人の責任を軽減し、精神的なサポートとなります。採用担当者が安心して採用活動に取り組める環境を整えることは、結果的に採用活動全体の効率と質の向上にも繋がるのです。
採用調査と類似サービスの違いを整理
採用活動において「採用調査」という言葉は、さまざまな文脈で使われるため、ときに混乱を招くことがあります。特に「バックグラウンドチェック」「リファレンスチェック」「身辺調査」といった類似の用語とは、混同されがちです。しかし、それぞれの言葉が指し示す調査の目的、範囲、そして手法には明確な違いがあります。これらの違いを正しく理解することは、自社の採用課題や目的に合致した適切な調査手法を選択し、効果的な採用活動を進める上で非常に重要です。このセクションでは、それぞれの定義と「採用調査」との関係性について詳しく解説していきます。
バックグラウンドチェックとの違い
バックグラウンドチェックとは、主に候補者が提出した履歴書や職務経歴書に記載されている学歴、職歴、保有資格などの情報が事実に基づいているか、また、犯罪歴や破産歴といった公的な記録に問題がないかを確認する調査を指します。これは、広義の「採用調査」の中でも、特に経歴の信頼性を検証し、コンプライアンス上のリスクを未然に防ぐことに特化した手法です。
採用調査が、候補者の人物像全般を多角的に把握するための包括的なプロセスであるのに対し、バックグラウンドチェックはそのプロセスを構成する具体的な手法の一つと位置づけられます。つまり、候補者の「事実」を確認することで、虚偽申告を防ぎ、企業に潜在的なリスクがないかをスクリーニングする役割を担っています。
リファレンスチェックとの違い
リファレンスチェックは、候補者の同意を得た上で、前職の上司や同僚などの関係者(リファレンス先)から、候補者の勤務態度、業務遂行能力、実績、コミュニケーション能力、チームワーク、人柄などに関する評価情報をヒアリングする調査です。客観的な事実の確認に重きを置くバックグラウンドチェックとは異なり、リファレンスチェックは候補者の定性的な側面、つまり「働きぶり」や「人柄」といった主観的な評価情報を得ることを主な目的とします。
これもまた「採用調査」を構成する重要な手法の一つであり、特にカルチャーフィットを重視する企業や、リーダーシップなど特定の人柄が求められるポジションの採用において、候補者の実像を深く理解するために非常に有効です。面接だけでは見えにくい候補者の強みや課題を、第三者の視点から把握することで、より精度の高い採用判断が可能になります。
身辺調査との違い
「身辺調査」という言葉は、多くの場合、探偵業者などが行う、候補者のプライベートな側面や家族構成、交友関係、素行など、業務とは直接関係のない個人的な事柄にまで深く踏み込む調査を想起させることがあります。しかし、採用活動において、候補者の業務遂行能力や適性とは無関係なプライバシー情報を過度に詮索したり、差別につながる可能性のある情報を収集したりすることは、法律で固く禁じられています。
合法的な「採用調査」は、あくまで企業の正当な採用判断に必要な情報に限定して行われます。具体的には、個人情報保護法や職業安定法といった法律によって、収集できる情報の範囲や取得方法が厳しく規定されており、業務と関連性のない個人的な事柄を調べることはできません。そのため、「身辺調査」が持つネガティブなイメージや、法的な制約を逸脱した調査とは一線を画し、企業が実施する採用調査は適法かつ倫理的な範囲で行われるべきであることを強く強調しておく必要があります。
【目的別】採用調査の主な手法と調査項目
採用調査にはさまざまな手法があり、企業の採用課題や目的に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。このセクションでは、採用担当者様が「経歴の信頼性確認」「コンプライアンスリスク回避」「人柄や働きぶりの把握」「オンライン上の言動確認」という主要な4つの目的に沿って、どのような調査手法を選択し、具体的にどのような項目を確認するべきかを詳しく解説します。自社が抱えるリスクや、候補者から特に知りたい情報に応じて、効果的かつ効率的な調査を実施するための参考にしてください。
①経歴の信頼性を確認する「バックグラウンドチェック」
バックグラウンドチェックは、候補者から提出された履歴書や職務経歴書に記載された情報の客観的な裏付けを取り、経歴詐称のリスクを排除することを目的としています。これは採用調査の最も基本的な部分であり、候補者の申告内容の信頼性を担保する上で不可欠なプロセスです。面接での自己PRや職務経歴書の内容が、客観的な事実に基づいているかを確認することで、採用判断の精度を大幅に高めることができます。多くの企業が応募者の約3割に何らかの嘘やごまかしがあるという現状も踏まえると、バックグラウンドチェックは採用活動における信頼性の基盤を築く重要な役割を担っています。
主な調査項目(学歴、職歴、資格など)
バックグラウンドチェックで一般的に調査される具体的な項目と、その確認方法は以下の通りです。
学歴:卒業証明書の提出を求めるほか、必要に応じて学校法人への直接問い合わせにより、卒業の事実や取得学位などを確認します。
職歴:在籍証明書の提出を依頼したり、前職企業への在籍確認を行ったりして、在籍期間、役職、退職理由などを確認します。
保有資格:資格証明書の写しを提出してもらうほか、発行団体への照会によって、資格の有無や有効性を確認します。
その他:専門職の採用においては、提出された論文や過去の実績ポートフォリオが本人のものであるか、その内容が事実であるかを確認することもあります。
②コンプライアンスリスクを回避する「反社チェック」
反社チェックは、企業のレピュテーション(評判)や事業継続性を脅かすコンプライアンスリスクを未然に防ぐことを目的とした調査です。特に、候補者が反社会的勢力と関わりがないかを確認することは、各都道府県の暴力団排除条例に代表される法令遵守の観点からも極めて重要です。また、過去の犯罪歴や重大な民事訴訟への関与がないかなどを事前に確認することで、将来的に企業が抱える可能性のある法的なトラブルや信用失墜のリスクを回避することができます。現在活躍している社員を守り、会社の健全な運営を維持するためにも、反社チェックは不可欠なプロセスと言えるでしょう。
主な調査項目(反社会的勢力との関与、犯罪歴、訴訟歴など)
反社チェックで一般的に調査される具体的な項目と、その確認方法は以下の通りです。
反社会的勢力との関与:専門のデータベースや、新聞記事、インターネット上の公知情報などをスクリーニングし、反社会的勢力との接点がないかを確認します。
犯罪歴:公開されている裁判情報や報道記事などを調査します。ただし、本人の同意と厳格な法的制約のもとで行われる必要があり、プライバシー侵害とならないよう細心の注意が必要です。
訴訟歴:過去に原告または被告として関与した民事訴訟の記録を調査し、潜在的な法的トラブルの種がないかを確認します。
破産歴:官報に掲載された破産情報の確認を行い、経済的な信用状況を把握します。
③候補者の働きぶりや人柄を把握する「リファレンスチェック」
リファレンスチェックは、履歴書や面接だけでは捉えきれない、候補者の実際の働きぶりや人柄、チーム内での立ち居振る舞いといった定性的な情報を得ることを目的としています。候補者本人から許可を得た上で、前職の上司や同僚といった関係者(リファレンス先)に直接ヒアリングを行うことで、より立体的でリアルな人物像を把握できる点が最大の特徴です。特に、企業文化(カルチャーフィット)を重視する企業や、リーダーシップ、協調性などが求められるポジションの採用において、候補者の潜在的な能力や適性を見極める上で非常に有効な手法となります。
主な調査項目(実績、スキル、コミュニケーション能力、退職理由など)
リファレンスチェックで一般的にヒアリングされる具体的な質問項目と、そこから何を知ろうとしているのかは以下の通りです。
実績や業務遂行能力:職務経歴書に記載された実績が事実であるかの裏付けに加え、目標達成に向けた行動特性や課題解決能力について具体的なエピソードを尋ねます。
スキル:候補者の専門スキルや語学力などのレベル感を、具体的な業務での活用事例を交えて確認します。
長所と短所(人間性):チームへの貢献スタイル、ストレス耐性、困難な状況での対応、改善点など、人間性や成長可能性についてヒアリングします。
コミュニケーション能力:上司、同僚、部下との関係構築の仕方や、チーム内での協調性、情報共有のスタイルなどを確認します。
退職理由:候補者本人から聞いた退職理由との整合性を確認し、転職の動機や企業への期待に食い違いがないかを把握します。
④SNSなどオンライン上の言動を確認する「SNS調査」
SNS調査は、候補者がオンライン上でどのような発信をしているかを確認し、潜在的なレピュテーションリスクを評価する目的で行われます。Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、ブログなどの公開情報から、候補者の価値観や社会に対する考え方、対人関係の傾向などを垣間見ることができます。特に、差別的・攻撃的な投稿や、機密情報の漏洩を示唆するような言動がないかを確認することで、将来的な「炎上」リスクや企業イメージの毀損を未然に防ぐ重要な役割を果たします。デジタルタトゥーとも呼ばれるオンライン上の言動は、一度拡散されると企業の信頼を大きく損ねる可能性があるため、注意深い確認が求められます。
主な調査項目(過去の投稿内容、不適切な言動など)
SNS調査で特に注意して確認すべき具体的な項目と、それぞれがリスクとなり得る理由は以下の通りです。
差別的・暴力的な投稿:人種、性別、宗教、障がいなどに関するヘイトスピーチや過激な発言は、企業の多様性や倫理観と相容れないだけでなく、社会的な非難を浴びる原因となります。
ネガティブな投稿:前職の会社や同僚に対する過度な誹謗中傷、不満の表明は、入社後のチームワークや組織へのエンゲージメントに懸念を生じさせます。
コンプライアンス意識を疑わせる投稿:飲酒運転の自慢、交通違反の示唆、守秘義務違反を疑わせる内容などは、企業の法令遵守体制や情報セキュリティに対する意識の欠如を示唆します。
その他:公序良俗に反する投稿や、社会人としての常識を逸脱したと見なされる言動は、企業のブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。
採用調査を実施する際の注意点と法的リスク
採用調査は、入社後のミスマッチを防ぎ、企業の生産性を高めるための有効な手段です。しかし、その実施方法を誤ると、法律違反や人権侵害といった重大な問題につながるリスクがあります。このセクションでは、採用担当者の方が適法かつ倫理的に採用調査を進められるよう、企業が必ず遵守すべき法律上のルールと注意点を詳しく解説します。個人情報保護法や職業安定法といった関連法規の要点を押さえながら、候補者のプライバシーに最大限配慮した公正な採用活動を行うための具体的な指針をご紹介します。
採用調査は原則合法だが、法律の遵守が必須
まず、採用選考の判断材料として、候補者の適性や能力を客観的に確認するために採用調査を行うこと自体は、原則として合法です。企業には「採用の自由」が認められており、どのような人物を採用するかは企業の裁量に委ねられています。そのため、応募者の経歴や人柄について、虚偽がないかを確かめる目的での調査は、この採用の自由の範囲内と解釈されています。
しかし、企業の「採用の自由」は無制限ではありません。個人情報保護法や職業安定法など、複数の法律によって厳しく制限されています。これらの法律が定めるルールを無視して採用調査を実施すると、企業は法的な責任を問われる可能性があります。トラブルを未然に防ぎ、適切な採用調査を実施するためには、関連法規の趣旨を深く理解し、定められたルールを厳格に守ることが何よりも重要です。
個人情報保護法と職業安定法を遵守する
採用調査を実施するにあたって特に重要となるのが、個人情報保護法と職業安定法です。個人情報保護法では、個人情報を取得する際の企業の義務が明確に定められています。具体的には、個人情報を収集する利用目的を特定し、候補者本人に通知または公表すること、そして原則として本人の同意なしに個人情報を取得してはならないとされています。また、思想・信条や病歴などの「要配慮個人情報」については、原則として取得が禁止されており、取得する場合もより厳格な条件が課せられます。取得した個人情報は適切に管理し、漏洩などがないよう安全管理措置を講じる義務も企業に課せられます。
一方、職業安定法では、第5条の4において「業務の目的の達成に必要な範囲内で、応募者の個人情報を収集・保管・使用しなければならない」と規定されています。これは、採用活動において、応募者の能力や適性とは直接関係のない個人情報、例えば家族構成や本籍地、住宅の所有状況などを収集してはならないことを意味します。これらの情報は、就職差別につながる恐れがあるため、採用調査においても業務と無関係な個人情報の収集は厳しく禁止されている点を理解しておく必要があります。
候補者本人からの明確な同意取得
採用調査を実施する上で、最も重要な手続きの一つが、候補者本人から「明確な同意」を取得することです。同意が必要な理由は、採用調査が候補者の個人情報を取得し、外部に委託する可能性を伴うためです。同意を得る際は、単に「調査を実施します」と伝えるだけでなく、どのような会社が、どのような目的で、どの範囲の情報を、どのように取得するのかを具体的に明示する必要があります。
そして、その内容を候補者が十分に理解した上で、書面(またはそれに代わる電子的記録)によって任意で同意を得ることが不可欠ですこれにより、候補者には、調査の目的やプライバシー保護への配慮、調査によって得られた情報の利用方法などについて十分に説明し、不安なく同意できる状況を確保しなければなりません。
このプロセスを怠ると、たとえ調査結果が正確であったとしても、企業は法的なリスクを負うことになりますので、細心の注意を払うようにしてください。
思想・信条など、差別につながる情報の取得はNG
職業安定法および個人情報保護法では、採用活動において収集が原則として禁止されている「要配慮個人情報」が明確に定められています。これには、思想・信条、信教、人種、民族、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、支持政党、労働組合への加入状況などが含まれます。これらの情報は、候補者の業務遂行能力や適性とは直接関係がなく、不当な就職差別に直結する恐れがあるため、企業が取得することは認められていません。
採用調査は、あくまで業務遂行能力や適性を客観的に判断するためのものであり、候補者のプライベートな側面や差別につながる情報を探るためのものではありません。採用調査を外部の専門業者に委託する場合でも、これらの情報を収集しないよう、依頼内容や契約内容を十分に確認し、調査会社が法規制を遵守して調査を行うことを徹底させる必要があります。企業が意図せずとも、調査会社が不適切な情報を収集してしまった場合、企業の責任が問われる可能性もありますので注意が必要です。
調査結果に基づく内定取り消しは慎重に判断する
採用調査の結果、候補者の申告に虚偽や問題点が発覚した場合、内定取り消しを検討することもあるかもしれません。しかし、内定は法的には「解約権留保付労働契約」とみなされ、客観的に合理的な理由がなければ一方的に取り消すことはできません。内定取り消しが認められるのは、発覚した虚偽が「重大な経歴詐称」であり、その事実を知っていれば当初から採用しなかったであろうと客観的に認められる場合に限られます。
例えば、業務上必須の資格を詐称していた場合や、重大な犯罪歴を隠していた場合などがこれに該当します。しかし、些細な記載ミスや、業務遂行能力に直接影響しない事柄を理由とした内定取り消しは、不当解雇として候補者から訴訟を起こされるリスクを伴います。内定取り消しを判断する際は、必ず弁護士などの専門家に相談し、法的なリスクを十分に検討した上で、慎重に決定することが極めて重要です。
採用調査の依頼から実施までの流れと費用相場
採用調査を実際に導入する際の具体的なプロセスや、費用について解説します。このセクションでは、採用調査を外部の専門業者に依頼することを想定し、問い合わせから調査完了、そしてレポート受領までの一般的な流れをステップごとに整理します。また、調査手法や範囲によって費用がどのように変動するのか、その相場観についても詳しく見ていきます。これにより、具体的なイメージを持つことができます。
採用調査の実施フロー(4ステップ)
採用調査を外部業者に依頼する際の標準的な流れは、大きく分けて以下の4つのステップで進められます。
1. 依頼と調査内容の決定:
まず、信頼できる調査会社を選定し、自社の採用課題や目的に合わせて、どのような調査項目が必要か、どこまで深く調査するのかといった具体的な内容について打ち合わせを行います。この段階で、調査の目的と範囲を明確にすることが重要です。
2. 候補者からの同意取得
企業は候補者に対し、採用調査を行う旨とその目的、調査内容、個人情報の取り扱いについて丁寧に説明します。そして、調査実施に関する書面での明確な同意を得ます。同意がなければ調査は実施できませんので、候補者の理解と協力を得ることが不可欠です。
3. 調査の実施
候補者からの同意書を元に、調査会社が調査を開始します。選定した調査手法(バックグラウンドチェック、リファレンスチェックなど)に基づき、プロフェッショナルな方法で情報収集が進められます。企業側はこの間、調査の進捗状況を適宜確認することができます。
4. 報告と結果の確認
調査が完了すると、調査会社から詳細なレポートが納品されます。企業はこのレポートの内容を精査し、採用判断の重要な参考資料として活用します。レポートには、確認された事実や情報が客観的に記載されているため、面接では見えにくい側面を知る貴重な機会となります。
採用調査にかかる費用相場
採用調査にかかる費用は、調査の手法や依頼する項目、調査の深さによって大きく異なります。一般的に、「固定料金制」と「従量課金制」がありますが、多くの場合、調査項目や範囲に応じて費用が変動します。そのため、一概に「いくら」とは言えませんが、この後のセクションで具体的な手法ごとの料金目安や費用を左右する要因について詳しく解説することで、皆様が大まかな予算感を掴めるようにします。
手法別の料金目安(バックグラウンドチェック、リファレンスチェックなど)
採用調査の費用は、その手法や依頼する内容によって変動しますが、ここでは代表的な調査の手法ごとにおおよその料金目安をご紹介します。
バックグラウンドチェック: 国内での基本的な学歴や職歴などの経歴確認であれば、1名あたり3万円から8万円程度が目安となります。調査項目が増えたり、複雑な内容になったりすると費用は高くなります。
リファレンスチェック: オンライン完結型で、リファレンス先がフォームに入力する形式であれば、1名あたり5万円から10万円程度で利用できるサービスが多くあります。もし調査会社が電話でのヒアリングを行う場合は、その分手間と時間がかかるため、さらに高額になる傾向があります。
反社チェック: データベース照会のみであれば、数千円から利用できるサービスもあります。より詳細な調査や、特定の業界に特化した情報源からの調査が必要な場合は、数万円程度になることもあります。
これらの金額はあくまで一般的な目安であり、サービスを提供する会社や契約内容によって大きく異なることをご理解ください。複数の会社から見積もりを取り、自社のニーズに合ったサービスを選ぶことが重要です。
費用を左右する要因(調査項目、調査の深さなど)
採用調査の費用は、いくつかの主要な要因によって変動します。これらの要因を理解することで、自社の予算と目的に合わせて調査内容を効果的にカスタマイズできます。
調査項目の数: 学歴、職歴、反社チェック、SNS調査など、確認したい項目が増えるほど費用は高くなります。必要な情報を精査し、過不足なく依頼することがコスト最適化の鍵です。
調査の深さ: 例えば職歴確認の場合、在籍期間のみを確認するのか、それとも役職、業務内容、具体的な実績、退職理由まで詳細に確認するのかによって料金が変わります。深掘りする情報が多いほど、調査にかかる時間と労力が増えるため、費用も上昇します。
調査対象の国: 国内の候補者に対する調査と比べて、海外の学歴や職歴、犯罪歴などを調査する場合は、情報へのアクセスや言語対応が必要となるため、国内調査よりも費用が高額になる傾向があります。
依頼件数: 一度に大量の採用調査を依頼する場合、多くの調査会社では1件あたりの単価が割引されることがあります。定期的な採用活動がある企業は、年間契約や複数人一括依頼を検討することでコストを抑えられる可能性があります。
これらの要因を総合的に考慮し、自社にとって最も費用対効果の高い調査プランを立てることが成功の秘訣です。
調査にかかる期間の目安
採用調査は、その手法や調査内容、対象地域によってかかる期間が大きく異なります。採用スケジュールに影響が出ないよう、事前に期間の目安を把握し、計画的に実施することが重要です。
国内のバックグラウンドチェック: 候補者の学歴や職歴など、基本的な情報の確認であれば、数営業日から1週間程度でレポートが納品されることが多いです。
リファレンスチェック: リファレンス先からの回答を待つ時間が必要となるため、リファレンス先の協力度合いにもよりますが、通常は1週間から2週間程度かかると見込んでおくと良いでしょう。
海外の調査: 調査対象となる国や確認項目が多岐にわたる場合、情報の取得に時間がかかるため、2週間から1ヶ月以上かかるケースもあります。特に海外の学歴や職歴の確認は、現地の制度や言語の壁があるため、十分な期間を見積もる必要があります。
最終面接後に調査を行う場合、内定出しのタイミングに間に合うよう、逆算して調査の依頼時期を決定することが肝心です。急ぎの対応が必要な場合は、特急対応オプションなどを提供している調査会社もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
採用調査サービスの選び方|失敗しないための3つのポイント
数多くの採用調査サービスの中から、自社に最適なものを選ぶためには、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。調査の品質やコンプライアンス遵守、コストパフォーマンスなど、サービス選定において考慮すべき点は多岐にわたります。
安易に価格だけで選んでしまうと、期待する効果が得られなかったり、かえってトラブルの原因になったりする可能性もあります。自社の採用目的やプロセスに合ったサービスを見極めることが、採用調査を成功させ、ミスマッチのない組織作りを実現するための鍵となります。ここでは、サービス選定で失敗しないための3つのポイントをご紹介します。
ポイント1:調査範囲と正確性
採用調査サービスを選定する上で最も重要なポイントの一つは、調査範囲の広さと情報の正確性です。自社が知りたい情報をそのサービスが網羅しているかを確認することが不可欠です。例えば、海外の学歴調査に対応しているか、特定の業界における反社チェックに強みがあるか、といった点は、自社の採用要件によって異なります。また、画一的な調査だけでなく、特定のポジションや懸念事項に合わせて調査項目を柔軟にカスタマイズできるかどうかも確認しましょう。
次に、情報の正確性をどのように担保しているのかを業者に確認することも非常に重要です。どのような情報源(公的データベース、独自のネットワーク、提携機関など)を利用しているのか、取得した情報の裏付けをどのように取っているのか、誤情報が混入しないためのプロセスはどうなっているのかなどを具体的に質問することで、サービスの信頼性を見極めることができます。正確性の低い調査結果では、誤った採用判断につながりかねないため、この点は徹底して確認するようにしてください。
ポイント2:調査スピードと料金体系
採用活動において、調査にかかるスピード(納期)は選考全体の進行に大きく影響します。特に競争の激しい採用市場では、選考のスピード感を損なわないよう、標準的な納期がどのくらいか、また急ぎの依頼(特急オプションなど)に対応可能かを確認しておくことが重要です。納期が不明瞭であったり、極端に遅かったりするサービスは、採用活動全体のボトルネックとなる可能性があります。
料金体系の明確さも重要な選定基準です。基本料金に含まれる調査項目と、オプション料金となる項目が明確に分かれているかを確認しましょう。見積もり以外の追加料金が発生する可能性がないか、事前にしっかりと確認することで、予期せぬコスト増加を防ぐことができます。複数の調査会社から見積もりを取り、各項目の費用が適切であるかを比較検討することをおすすめします。料金の安さだけで判断せず、提供されるサービス内容と価格のバランスを総合的に評価することが賢明です。
ポイント3:レポートの分かりやすさとサポート体制
採用調査の結果は、最終的な採用判断を下す上で極めて重要な情報となります。そのため、納品される調査レポートが単なるデータの羅列ではなく、採用担当者が判断しやすいように要点がまとめられ、視覚的に分かりやすく整理されているかを確認しましょう。複雑な情報を簡潔かつ明確に伝えるレポートは、スムーズな意思決定を助け、社内での情報共有も円滑にします。
また、サービス提供会社のサポート体制の手厚さも重要な選定基準です。調査結果に不明な点があった場合に気軽に質問できるか、候補者への説明方法や、万が一内定取り消しを検討する際の法的な観点からのアドバイスをもらえるかといったサポートの有無は、導入後の安心感に直結します。信頼できるパートナーは、調査だけでなく、その後の対応まで含めて企業の採用活動を強力に支えてくれる存在となります。
【目的別】おすすめの採用調査サービス
このセクションでは、「どのような特徴を持つサービスを選ぶべきか」という観点から、目的別におすすめのサービスタイプを紹介します。「総合的なバックグラウンドチェック」「スピーディーなリファレンスチェック」「反社チェック特化」の3つのカテゴリに分け、それぞれの目的に合致するサービスが持つべき機能や特徴を解説します。
総合的なバックグラウンドチェックにおすすめのサービス
経歴詐称の防止からコンプライアンスチェックまで、幅広く網羅的な調査を行いたい企業には、以下のような特徴を持つサービスが適しています。第一に、国内だけでなく、海外の学歴や職歴調査にも対応しているサービスであれば、グローバル人材の採用にも安心して活用できます。第二に、反社チェックはもちろんのこと、訴訟歴や破産歴なども標準プランに含まれているサービスを選ぶことで、潜在的なリスクを多角的に検証できます。
また、自社の採用要件に合わせて調査項目を柔軟にカスタマイズできるサービスであれば、無駄なく必要な情報だけを効率的に収集できるでしょう。さらに、法規制を遵守した調査ノウハウが豊富であることは、法的トラブルを避ける上で非常に重要です。特に、企業の幹部候補や専門職など、採用における影響が大きいポジションでは、こうした網羅性と正確性を兼ね備えたサービスが力を発揮します。
スピーディーなリファレンスチェックにおすすめのサービス
候補者の人柄やカルチャーフィットを、採用選考のスピード感を損なわずに確認したい企業には、スピーディーなリファレンスチェックサービスが有効です。具体的な特徴としては、まず候補者や推薦者(リファレンス先)がオンライン上で手軽に回答できるプラットフォームを提供している点が挙げられます。これにより、推薦者への負担が減り、回答率や回答スピードの向上が期待できます。
次に、質問項目のテンプレートが豊富で、自社用にカスタマイズも可能なサービスであれば、多忙な採用担当者の手間を省きつつ、知りたい情報を的確に収集できます。さらに、調査の進捗状況がリアルタイムで確認でき、推薦者へのリマインドも自動化されているSaaS型のサービスは、採用担当者の心理的負担を大きく軽減します。このようなサービスは、特に多くの候補者を対象にリファレンスチェックを実施したい場合に適しており、効率的な採用プロセスを実現するために役立つでしょう。
反社チェックに特化したおすすめのサービス
コンプライアンス遵守を最優先し、反社会的勢力との関わりを徹底的に排除したい企業には、反社チェックに特化したサービスがおすすめです。これらのサービスは、新聞記事や公知情報だけでなく、独自のデータベースや業界専門情報など、複数の情報ソースを横断的に検索できる機能を備えています。これにより、一般的な検索では見つけにくい情報まで網羅的にチェックできます。
また、同姓同名の人物を正確に見分けるためのスクリーニング精度が高いことも重要な特徴です。これにより、誤った情報を元に判断してしまうリスクを低減できます。さらに、一度調査した対象者について、新たなリスク情報が発生した場合に通知するモニタリング機能があるサービスであれば、採用後も継続的にリスクを管理し、企業の安全性を高めることに貢献するでしょう。
採用調査に関するよくある質問(Q&A)
採用調査を検討・実施するにあたって、採用担当者の方々からよく寄せられる疑問にお答えします。ここでは、これまでの解説内容を補足し、より実践的な視点から具体的な質問と回答をQ&A形式でご紹介します。皆様が抱える不安や悩みを解消し、安心して採用調査を進めていただくための一助となれば幸いです。
Q1. どのタイミングで実施するのがベストですか?
採用調査を実施する最適なタイミングは、一般的に「内定を出す前の最終面接後」が推奨されます。このタイミングがベストとされる理由はいくつかあります。まず、コストの観点から、多くの候補者に対して調査を行うよりも、最終選考段階まで絞り込まれた候補者に限定して実施する方が効率的です。
次に、調査結果を踏まえて最終的な内定判断を下せるという点が挙げられます。例えば、経歴の虚偽や潜在的なリスクが明らかになった場合、内定前に判断を修正することが可能になります。これにより、入社後のミスマッチやトラブルを未然に防ぎ、採用の精度を高めることができます。
一方で、内定後に調査を実施し、その結果を理由に内定を取り消す場合には、法的なハードルが非常に高くなります。内定は「解約権留保付労働契約」とみなされるため、客観的に合理的な理由がなければ取り消しは認められません。些細な虚偽や業務に直接関係のない事柄を理由とした内定取り消しは、不当解雇として訴訟リスクを伴う可能性がありますので、十分な注意が必要です。
Q2. 候補者に調査を拒否された場合はどうすればいいですか?
候補者が採用調査への同意を拒否した場合、企業として強制することはできません。採用調査はあくまで候補者の任意に基づき実施されるものであり、同意なく調査を進めることは個人情報保護法に抵触する恐れがあります。
このような状況に備え、企業は事前に方針を定めておくことが重要です。対応策としては、まず、調査の目的やプライバシー保護への配慮、情報管理体制について改めて丁寧に説明し、候補者の不安を取り除く努力をします。しかし、それでも拒否された場合は、採用選考を先に進めないという判断も選択肢の一つとなります。特に、ポジションの重要性や企業のコンプライアンス基準に照らして、調査が不可欠と判断される場合には、その旨を候補者に伝えた上で選考を中止するケースも考えられます。
ただし、調査の拒否が即座に「何かを隠している」と短絡的に判断するのではなく、候補者がなぜ拒否するのか、その理由を丁寧にヒアリングする姿勢も大切です。候補者との良好な関係構築を維持しつつ、企業の採用基準とバランスを取りながら慎重に対応することが求められます。
Q3. 調査結果はどこまで信用できますか?
信頼できる専門業者による採用調査の結果は、客観的な事実に基づいているため、高い信頼性があると言えます。特にバックグラウンドチェックのように、公的記録や文書を通じて経歴を確認する調査については、その正確性は非常に高いです。採用調査を導入することで、応募者の自己PRの整合性、社会性、コミュニケーション能力などの情報を得ることができ、現在頑張っている社員のためにも、問題社員の入社を防ぐ確率を高めるシステムとして機能します。
しかし、調査結果が100%完璧なものではないことも理解しておく必要があります。例えば、リファレンスチェックのような定性的な情報は、推薦者との関係性や、質問の仕方によって内容が左右される可能性もゼロではありません。採用調査は法的に許される範囲と許されない範囲があり、制限される範囲を理解することも重要です。
したがって、調査結果はあくまで採用判断材料の一つとして捉え、面接での候補者の印象や、過去の選考過程で得られた情報と合わせて、総合的に判断することが極めて重要です。第三者機関によるリスクチェックは、採用担当者の疑心暗鬼な目線を和らげる効果もありますが、最終的な採用の決定は、複数の情報源を多角的に検討した上で行うべきと言えるでしょう。
まとめ:適切な採用調査で、ミスマッチのない強い組織作りを
採用活動におけるミスマッチは、企業にとって多大なコストとリスクを伴います。本記事で解説してきたように、採用調査は単に候補者の「粗探し」をするものではなく、こうしたリスクを未然に防ぎ、企業文化に合致した優秀な人材を確保するための戦略的な投資です。適切な採用調査を導入することで、経歴詐称の防止、コンプライアンスリスクの低減、客観的な選考の実現、採用の質の向上、そして採用担当者の心理的負担の軽減といった、多岐にわたるメリットを享受できます。
ミスマッチのない強い組織を作るためには、採用調査を賢く活用することが不可欠です。その成功の鍵は、大きく3つのポイントに集約されます。第一に、自社の採用課題や目的に合わせて、バックグラウンドチェック、リファレンスチェック、反社チェック、SNS調査など、最適な調査手法と項目を適切に選定することです。第二に、個人情報保護法や職業安定法といった関連法規を厳守し、候補者からの明確な同意を得るなど、適法かつ倫理的な方法で調査を実施することです。そして第三に、調査結果を絶対的なものとして捉えるのではなく、面接やその他の選考情報と合わせて、多角的な視点から総合的に判断することです。
採用調査を適切に活用することで、企業は候補者の潜在的なリスクを排除しつつ、より深く人物像を理解し、入社後に長期的に活躍できる人材を見極めることができます。これにより、早期離職の防止やチームの生産性向上に繋がり、結果として企業の持続的な成長を支える強い組織作りへと貢献するでしょう。
探偵社PIO編集部監修
本記事は探偵社PIOの編集部が企画・編集・監修を行いました。

