どこからが浮気? その境界線を考える

どこからが浮気? その境界線を考える
浮気や不倫とは、配偶者がいながら他の異性と肉体関係を含む間柄になることを指します。では肉体関係がなければ浮気に当たらないかと言うと、そうとは言い切れません。
別の言い方をすると、たとえ肉体関係がなくても浮気に該当する場合もあるということです。
民法はどうなっている?
まず夫婦とは、本来どうあるべきなのでしょうか。
それを考察するにはまず、民法の規定を見てみましょう。
民法第752条には、
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」
と定められています。これは主に、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務についての規定であり、夫婦間の義務として「貞操義務」もあると解釈されています。何故なら他の異性と肉体交渉することは民法770条に定められた「不貞行為」にあたるからです。
その不貞行為を法律的に言うと、「配偶者のある者が、その自由意志に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つこと」です。簡単に言えばいわゆる浮気や不倫をすることであり、根拠となるのは、夫婦はお互いに貞操義務を負わなければならないことです。
貞操義務に反して夫か妻の一方が不貞行為を行ったときには、他方は配偶者の不貞行為を理由に離婚の請求をすることができます。
これが一般的に広く認知されている離婚理由であり、誰しも疑う余地はありません。しかし問題となるのはグレーゾーンにあたる部分で、例えば、配偶者以外とキスをしていた、配偶者以外の異性と2人で食事をした、長時間異性の家にいた、などの場合です。これらについて考察してみましょう。
判断基準の一つは、異性との約束を配偶者に秘密にするかどうか
ある夫婦がいて、夫がある女性と次の日曜日に夕食を一緒にすることになったとします。それは例えば、取引先の女性営業担当、PTAの役員、同窓会で会った同級生などです。その場合、夫が妻にその旨伝えれば問題はないでしょう。そこには、肉体関係に持っていこうというやましい思惑は、あまりありません。

しかし反対に、夕食を食べることを妻に秘密にして、他の口実で出かけたとすれば、それは浮気の範囲に入ると考えるべきです。
次に、こうした事情を妻が知って裁判になったとき、まず争点となるのは、夫が女性と2人きりでいたかどうかです。
例えば、夫が趣味のサークルに入っていたとして、多人数集まるその会合に出かけるのを妻に秘密にした場合は、あまり浮気とは認定されません。女性といることを隠そうとしたのか、サークルに行くことを隠そうとしたのか、判断が難しいからです。
そこで裁判において浮気と認定されるためには、女性と2人で会うことがまずは要件となります。
ただしここで難しいのは、たとえ女性2人きりで会ったとしても、それが1回だけでは浮気となるわけではないということです。
継続的な関係があれば浮気である
この場合は、継続的な関係が必要であり、女性と2人で会ってお食事する関係が数ヶ月・数年にわたって続いていれば浮気になるということです。これは携帯電話やスマホのメール・LINEについても言えることで、その理由となるのは、
【長期間にわたる親密な関係があれば、食事やメールのみならず、肉体関係を含んだ関係になっていることが想起される】からです。

肉体関係とは第三者の目に触れることがありませんから、食事など第三者の目に触れる行為・状態によって、浮気していると容易に推定されるということになります。
したがって、長期間にわたって既婚同士の異性が2人で会ったり、食事したり、車で出かけたりしていれば、たとえ本人が「肉体関係はない」と言い張っても、浮気と認定される可能性は高くなります。
同様の理由で、数ヶ月あるいは数年にわたって異性の家に通っていた、家の中で2人で食事をしていた、という場合も裁判においては浮気と認定されてしまうでしょう。
「不貞行為」とは性的関係を指しますが、肉体関係は他者から見えませんし、本人たちは当然否定しますから、裁判においては、要は2人の親密さがどの程度かという点から判断するしかないわけです。
なお、1回だけ女性とホテルに行ったのであればグレーゾーンと言えますが、それがラブホテルであればアウトです。理由は簡単で、ラブホテル=性行為を目的とした場所だからです。

「風俗店」は浮気と認定されるか?
たまに聞くことですが、「水商売の女性が相手なら浮気ではない」、「風俗店に通うなら問題ない」。
しかしこれらは誤った情報で、たとえ1回でもそれらお店に行って行為に及べば不貞行為に該当します。
ただ、風俗店に勤める女性にとって、お客が結婚しているかどうかは問題ではありませんから、たとえお店に行った事実があったにせよ、彼女に対して慰謝料を請求しても却下されるでしょう。もっとも夫に対してはできますが、慰謝料を取れる可能性があるのは、相手となる女性が、夫が既婚者であることを知りながら不貞行為に及んだ場合に限られます。これは是非とも知っておきましょう。
根拠は【民法第709条 不法行為による損害賠償】で、そこには次のように書かれています。
「自分の行為が他人に損害を及ぼすことを知っていながら、あえて(故意に)違法の行為をして、他人の権利や法律上保護される利益を侵し損害を与えた者は、その損害を賠償しなくてはならない。また、不注意(過失)による場合も同様である」
つまり風俗嬢は、《自分の行為が他人に損害を及ぼすことを知って》いません。客が未婚か既婚かは知りませんし、それは彼女の仕事には関係ありません。結果は、浮気ではないということになります。
他の行為について
他の行為とは、具体的には、キスする、抱き合う、お泊まりするなどです。
これらの行為もやはり、継続的な関係にあるかどうかが争点となります。
結論としては、浮気と認定されるのは肉体関係があるかどうかが一番の要件となります。
次に、これらがない場合は、継続的に親密な関係にあるかどうかです。
肉体関係があれば、短い期間でも浮気となりますし、肉体関係がなくても、長期間親密であれば浮気とまります。
このように、浮気であるかどうかは、男女間の親密さを総合的に判断して判断されると言えるのです。